「持たざる者」がシェアエコノミーを生んだ 21世紀のイノベーションの「光と影」

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シェアリング・エコノミーは、コストをかけずに簡便にサービスが手に入るというメリットがある反面、その現実は、持たざるもの同士がおカネのやり取りをしているだけともいえます。結局はコーポレート・アメリカに飲み込まれて、持たざるものを増やすだけの経済システムという皮肉な構図になっていると批判する専門家もいます。

体験できればエクスペリエンス・エコノミー

シェアリング・エコノミーとも大きく関連するキーワードをもうひとつ紹介します。

イベント専門のソーシャルメディア、イベントブライトの調査によれば、ミレニアルズの実に78%が「モノを買うより体験におカネを使いたい」と答えていることがわかりました。

その「体験」の大きな要素のひとつは以前の記事でもお伝えした「食」です。フーディ・ジェネレーションとも呼ばれるミレニアルズは、他のどの世代よりも食におカネを使います。その結果、1カ月に外食に使うおカネは174ドル(約2万1千円)で、これは他の世代を1割以上、上回っているというデータもあります。

またミレニアルズの9割は、懐が寂しくても美味しいものにはおカネをかけると答え、21歳から24歳のミレニアルズの6割以上は、新しい靴を買うより友達とディナーに行きたいと答えています。バーチャルに囲まれたデジタル・ネイティブですが、五感で楽しめ、友達との時間を彩る食がもたらす体験に、おカネをかけているのです。

また食関連のイベントやフェスティバルも人気です。1年間に5回以上参加したというミレニアルズが5割という数字も以前お伝えしました。

実はこうしたイベントは食だけではありません。大規模な音楽フェスもますます増加、さらに「コン(コンベンション)」と呼ばれる大規模イベントも増え続けています。

もともとアメコミや日本のアニメ、ゲームなどポップカルチャーファンとインダストリーの交流イベントだったコンベンションが、今では大手メディア、大企業を巻き込んだ数千人~数万人規模のイベントに膨れ上がっています。ジャンルもSF映画から手芸、食、フィットネスまで多岐にわたっています。ネット上に誕生したバーチャルなコミュニティが、フィジカルなものとして現出した「コン」は、まさにデジタル時代ならではのものです。

こうしたイベントのチケットは決して安いものではないのですが、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットなどスマホのあらゆるアプリを駆使して何倍にもエクスペリエンスを増幅させているのは間違いありません。

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