「持たざる者」がシェアエコノミーを生んだ 21世紀のイノベーションの「光と影」

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・バイク(自転車)シェア

車社会の米国では日本のように自転車を通勤に利用する人は20年前にはほとんどいませんでした。しかし都市の交通渋滞の悪化と環境への配慮、さらに健康志向の高まりでじりじりと支持を上げて来ています。

それを加速させているのが、ここ5年ほど大都市に導入されているバイクシェア。誰でも利用できる自転車が市内の各所(バイクステーション)に配置されていて、年会費を払ってキーをもらい、好きなステーションで乗って、別のステーションで乗り捨てできます。

ヨーロッパで始まり、ここ数年ニューヨーク、サンフランシスコなどの都市に広がりつつあり、通勤通学、ジムへの行き帰りなどの利用が多くなっています。地方自治体が民間企業のスポンサーで運営しているため、厳密にはピア・トゥ・ピアではありませんが、安くクリーンな公共交通機関として普及しています。

シェアリング、オンデマンド・エコノミーは表裏一体

こうしたシェアリング・エコノミーが一気に普及した理由として、テクノロジーの発達と共に、安く便利なサービスへの需要が高まったことは言うまでもありません。さらにシェアすることで二酸化炭素ガスやゴミなどの廃棄物などが減少するという環境へのやさしさも、魅力のひとつとなっています。

しかしもうひとつ忘れてはならないのは、前回記事で述べたギグ・エコノミー(オン・デマンド・エコノミー)、つまりフリーランスのミレニアルズが激増している現実との密接な関係です。

シェアリング・エコノミーで労働力を提供しているのは、ほぼフリーランス・ワーカーです。つまりオン・デマンド・エコノミーとシェアリング・エコノミーは表裏一体、ここにシェアリング・エコノミーが持つ不確定な未来像が隠されています。

たとえばウーバーの運転手は、通常のタクシードライバーよりも時間当たりの収入は多いと言われます。しかしフリーランスである彼らは、車やガソリン代はもちろん自前ですし、健康保険などの恩恵も受けられません。

またエッツィーで手作り商品を売る人の多くは、リーマンショック後に職を失ったりして、少しでも収入を得るために趣味を生かして始めたという人たちです。

そんなフリーランスが大挙して集まった結果、手数料だけで運営企業の収益は膨れ上がり、エッツィーのように株式上場を果たした企業もあるほどです。

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