特定企業と癒着か、経産省「疑惑の公募」 最初からNTTデータが本命

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 NTTデータ出向者が公募窓口担当者の矛盾

ところが、冒頭のように業界各社はうまくいかない可能性が高いと踏んでいる。というのも、現在、財務会計ソフトを使用していない小規模企業は、伝票打ち込みや税務申告を税理士に外注しているのが実情。国策SaaSの利用コストを、比較的安価な税理士費用より安くすることはできないと見られており、当然使われる可能性は低い。

しかも、システム構築の業者選定過程には不透明な点がある。実は経産省は昨年秋から業界に呼びかけて水面下で検討会を実施、そこではNTTデータが受注業者の本命のように扱われてきたのだ。本誌が入手した「秘密」と記された資料には、同社が想定するシステムの内容が細かく記載されている。基盤部分のシステム構成については、富士通の事例が明記されている。

この点について、経産省情報処理振興課は「検討会に加わった事業者に決まったわけではない。応募した事業者を公平に審査するため問題はない」と説明する。が、参加した企業は「検討会ではNTTデータを中心にして、相当細かい技術の仕様まで決められた。参加していない企業がいきなり横から割り込むことは想定していないはずだ」と話す。

さらに公平な審査の実施を疑わせるような事実がある。というのも、担当の情報処理振興課にはNTTデータから子会社を経由して出向している係長が在籍しており、この人物こそがプロジェクトの中心人物なのだ。幹事会社の公募に関しては問い合わせ窓口にもなっている。お手盛りと批判されても仕方がなく、そもそも官民交流法の禁止事項に触れるおそれすらある。

出向者であることはNTTデータ自らが認めているのだが、経産省の担当課長補佐は「係長はNTTデータとはまったく関係ない」とかたくなに否定し続ける。プロジェクトは現在、幹事会社の公募を終え、審査の過程にある。はたして国策プロジェクトはどこに向かうのか。

 

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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