インドネシア新幹線、真に敗れたのは誰か 超大型案件は中国に軍配が上がったが…

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インドネシアで導入されることが決まった、中国側の高速鉄道の車両模型(写真:Rivan Awal Lingga / Antara Foto / ロイター / アフロ)

「極めて遺憾だ」――。9月29日、インドネシアのソフヤン・ジャリル国家開発企画庁長官から説明を受けた菅義偉官房長官は、不快感をあらわにした。

日本と中国が受注を競ってきたインドネシアの高速鉄道計画は、二転三転の末、中国案が採用されることで決着した。インドネシアにとって日本は最大の援助国。2013年度までの円借款は累計5兆円に迫る。

人材育成や社会インフラの整備を通じ、同国の開発に大きく寄与してきた自負もある。高速鉄道についても、2008年ごろから事業化調査を進めており、確実に受注できる目算があった。

新大統領の就任で流れが一変

ただ、巨額の建設費がネックでもあった。運賃収入だけでは膨大な初期費用を負担しきれない。そのため、日本側は、民間だけで実施するのは困難と判断。インドネシア政府にも一定の負担を求める提案をした。

総事業費約6000億円の75%を金利0.1%の円借款で賄うというものだ。金利負担が少なく、インドネシア政府にとって受け入れやすい案のはずだった。

ところが、2014年10月にジョコ・ウィドド氏の大統領就任で、流れが変わった。同大統領は所得分配制度の改変を公約に掲げ、貧困層の支援を重視する。政府予算も、首都ジャカルタがあるジャワ島ではなく、貧困層の多い島嶼(とうしょ)部に手厚くする方針を掲げる。

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