仏高速鉄道TGVを悩ます型破りなライバル 低価格を武器に新興企業が攻め込む
米国の「Uber」に代表される、一般のドライバーが自家用車で他の利用者を運ぶ「ライドシェア」。タクシー業界の反発なども含め、世界各国で話題を呼んでいるサービスだが、欧州では自家用車の「相乗りサービス」が急速に普及し、鉄道のライバルとして無視できない存在になりつつあるようだ。
今年7月上旬に日本で初めて開催された、国際鉄道連合(UIC)の「世界高速鉄道会議」。高速鉄道を保有する各国の国鉄・鉄道会社首脳がこれまでの経過や現状を説明する中、フランス国鉄(SNCF)のギョーム・ペピCEOは、航空や新しい自動車交通などの急速な発達と、利用者が料金に対して敏感になってきたことを挙げ、高速鉄道は「反撃を始めなければならない」と述べた。
「ライドシェア」に警戒感
「TGV」の名で知られるフランスの高速鉄道の総延長は2000km超のネットワークを誇り、新しい路線では日本の東北新幹線「はやぶさ」と並ぶ世界最高速の時速320kmで走行する。その高速鉄道の新たなライバルとなる「新しい自動車交通」とは、ライドシェアだ。英国の鉄道業界専門誌「レールウェイ・ガゼット・インターナショナル」2015年3月号の記事はフランスの例を挙げ、ライドシェアがすでに長距離鉄道輸送を脅かす存在になりつつあることを報じている。
記事で取り上げられているのはフランスの新興企業「Bla Bla Car(ブラブラカー)」だ。同社はフランスをはじめ、イタリア、ドイツなど欧州のほかインドやメキシコなど19カ国でライドシェアのサービスを展開し、会員数は2000万人にのぼる。主な対象は長距離移動の利用者で、平均移動距離は330kmという。
同社のサービスは簡単に言うと、「相乗り」の相手を探してくれる。自家用車を持つ会員は、自分が移動する日時や行程、乗れる人数などを登録する。相乗りしたい会員は出発地・目的地などから自分と合う車を検索し、ドライバーと連絡を取って決定する。料金はシステムが人数と距離に応じた燃料消費量などを算出して「割り勘」のように提示し、ドライバーは価格調整もできるものの、ガソリン代などの必要経費を上回る「利益」は出ない仕組みだ。欧州を格安に旅行するバックパッカーなどには「ヒッチハイクの有料ネット版」とも呼ばれているようだ。
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