仏高速鉄道TGVを悩ます型破りなライバル 低価格を武器に新興企業が攻め込む

拡大
縮小

フランス国鉄もこれらの交通機関への対抗策を打っており、2013年には最安運賃10ユーロ(約1350円)をうたう格安高速列車「ウィゴー(Ouigo)」の運転を始めた。運行開始から約1年で利用者数が250万人を突破するなど成績は好調で、今後は路線の拡大も計画されている。7月の「世界高速鉄道会議」に出展していた同社のブースにも「ウィゴー」の列車が大きく描かれており、力を入れていることがうかがえた。鉄車輪式の従来鉄道で世界最速となる時速574.8kmの記録を持つ「高速鉄道大国」は、スピードの追求から価格競争への転換を余儀なくされているようだ。

日本にも長距離移動のライドシェアサービスは存在し、遠方でのライブ参加などといった、いわゆる「遠征」などで利用されているようだ。だが、格安の高速バスから新幹線まで、さまざまな価格帯の公共交通網が発達し、信頼性も高い日本では、まだ一般に幅広く利用されるまでには至っていないのが現状といえる。

今後は「料金」も重視される時代に

だが、今後高速鉄道の建設が計画されている新興国などでは、公共交通の整備が進まず、車の相乗りが珍しくない国も少なくないだろう。そして、すでにLCCが飛び交っている国も多い。

世界初の高速鉄道として新幹線が開業してから半世紀。高速鉄道は中・長距離において航空機よりも利用しやすく、高速道路を走る車よりも速く、大量の乗客を低コストで運べる乗り物として世界各地に広がってきた。だがここにきて、低料金を売りにしたLCCや、安さと時間や発着地の自由さがあるライドシェアが鉄道の地位を少しずつ脅かしつつある。今後の高速鉄道の成功には、スピードだけでなく「料金」が大きなファクターとなってくるだろう。

小佐野 カゲトシ 鉄道ライター

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おさの かげとし

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年独立。国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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