大排気量エンジン車はもはや「絶滅危惧種」だ 時代の趨勢でもクルマ好きにはたまらない
クルマと社会の交差点にある「クルマ文化」にストップかゴーの判定を下す好評連載。今回のテーマは、大排気量に惹かれる人間の性について。
現代の恐龍
GQ誌2016年7月号で、これから値が上がる可能性のあるクルマってなんだろう、という企画に携わった。値が上がる候補の条件は、僕の見るところ、気筒数が多くて、排気量が大きくて、出来れば過給器のついていないクルマではないだろうか。ひとことで言うと、時代おくれなクルマ。70年代にオイルショックが起きたとき、大型車体で大排気量の米国車は恐龍にたとえられたけれど、いまの恐龍といえば、そんなクルマを指すかもしれない。
脱・恐龍化、つまり排気量のダウンサイジングは世界的な傾向だ。たとえばポルシェ。看板車種の911にしても、先ごろ排気量を従来の3.4リッターから3リッターに減らし、パワーを補うために過給器(ターボチャージャー)を装着した。
もちろんポルシェには911ターボという1975年から連綿とモデルチェンジを繰り返す高性能の人気モデルがあるけれど、排気量を減らしてターボ化というのは、これまでの大排気量・大馬力の911ターボのありかたとはまったく異なる。むしろ逆をいくものだ。
「スポーツカーの未来に対するひとつの答えです」。ポルシェでは新世代の911の方向性について、燃費のためにパワーを犠牲にしているわけでなく、あくまでもポジティブな変更であることを強調している。「燃料消費量低減とパフォーマンスの大幅な向上」と新型911の発表に合わせたプレス向けのリリースで謳うだけあって、最高出力は20馬力上がったことが強調されている。
並行して、プラグイン・ハイブリッドで652kW(887ps)というパワフルな918スパイダー(価格は768,026ユーロなので概算9200万円超)をラインナップに設定。ポルシェでは、これからの時代のスーパースポーツは電気の力を積極的に借りていくことを明言している。