細谷雄一「日本が担う世界史的な役割」

『国際秩序』を書いた、細谷雄一慶応大学教授に聞く

複雑な世界情勢の核心をつかむには、点(=国家)と線(=2国間関係)を超えて、「面」としてとらえる視点が欠かせないという。

──世界を「面」としての国際秩序の中でとらえています。

日本はこれまで、自国と米国をつなぐ日米関係、中国と結んだ日中関係という「線」で外交を考え、その関係をより友好的にしようとしてきた。そして多くの場合に、それ自体が外交で自己目的化してしまった。例えて言えば、将棋やチェス、囲碁のように「面」として国際秩序において最終的に利益を実現しようとする発想では弱い。今、日本は世界の大きな流れから取り残されつつある。そのような危機を克服するためには、「面」として国際秩序をとらえ、その中で自らの利益と繁栄を実現するための戦略を持つことが重要だ。

──その際に歴史という器の中に入れて展望するのが大切だとも。

歴史的な例を挙げたい。1931年に満州事変が起きた。そのときに軍や政府の首脳は、満州事変が世界史的にどのような影響を及ぼすかを考えていなかった。その3年前の28年にブリアン=ケロッグ条約(パリ不戦条約)が結ばれている。これによって戦争は違法化し、それが国際的な規範として定着しようとしていた。ところが日本は、そのような規範を壊した。それが結局、ヒトラーの侵略の道を開く結果となった。

政府要人や関東軍の軍人は、自分たちの行動が世界史の潮流に背中を向けていたことを認識していなかった。「面」としての国際情勢がどう動いているか、流れが見えていない。すでにこの時代には、帝国主義的な侵略が国際的な規範として否定されつつあったのだ。

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