細谷雄一「日本が担う世界史的な役割」

『国際秩序』を書いた、細谷雄一慶応大学教授に聞く

──中国は日本を軽視し始めていませんか。

もしも日本が衰退すれば、中国の指導者たちはもはや日本と対話をして譲歩を示す必要はないと考えるだろう。中国は、核兵器を含めた軍事力や経済力を用いて日本に圧力をかければ、いちいち外交交渉の場で妥協しなくても、自らの望む結果が得られると考えるかもしれない。このような状態は、間違いなく日本にとって不利益になる。

──では、日本はどうすればいいのでしょう。

十分な国力を持つことが、対中外交上も重要となる。でも、日本の国力に限界がある。どうすればよいか。それは、米国との同盟を強化することだ。点と点、線ではなくて「面」で国際関係を考えると、日中協調を強化するためにも、確固とした日米同盟が必要だ。米国と中国のどちらも、日本外交にとって最重要の相手国だ。中国との和解を達成するためにも、中国が日本を軽視できないような国際環境を構築することが重要だ。

鳩山由紀夫元首相は、日米同盟を傷つけて、さらには日中関係も好転させられなかった。この両者は無関係ではない。日米同盟を強化したうえで日中関係を深めていくことは、2006年に安倍晋三政権が成功している。日中関係をよくするためにも、日本が十分な国力、経済力、軍事力を備えなければいけない。

──日本には悲観論が多いです。

日本の強さと戦略的な位置づけを、冷静に認識する必要がある。日本は世界第3の経済大国だ。軍事技術でも海軍力、空軍力においては、依然としてアジアで最先端の国といえる。加えて、日米同盟がある。

国際秩序の中心は、冷戦時代には大西洋にあった。だが、今は太平洋にある。中国と米国は、経済的には提携しているが、軍事面や基本的価値の面では対立している。軍事的には均衡が成り立っているとしても、価値の衝突は避けられない。

米国は自由主義、民主主義、法の支配、人権尊重というルールをアジアにも定着させようとする。ところが、中国はこのような動きに抵抗している。ここで価値の衝突が見られる。米中どちらの価値が、この地域に浸透するか。日本はむしろ、世界史的にも重要な役割を担う時を迎えている。

(聞き手・本誌:塚田紀史 =週刊東洋経済2012年12月22日号)

ほそや・ゆういち
1971年千葉県生まれ。立教大学法学部卒業。英バーミンガム大学大学院国際関係学修士号取得(MIS)。慶応義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。博士(法学)。北海道大学専任講師などを経る。著書に『戦後国際秩序とイギリス外交』『外交による平和』『外交』『倫理的な戦争』。

『国際秩序』 中公新書 924円 354ページ

  

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