日本人は中東から見ると「変わった人たち」だ

世界は「欧米対イスラム」で回っている

──日本人はどうすれば。

イスラム世界対欧州、米国の関係を理解するのは、現代のグローバル世界の中心的な問題を理解することなのだが、われわれはそうしてこなかった。日本人は米国ばかり見てきたといわれるが、実は米国の本筋は見てこなかったのではないか。

西海岸を見ると日系人も多いし、アジア系が全般に幅を利かせている。しかし政治的には米国は厳然と東海岸中心の世界で、それは欧州と一体で中東に直結している。それはわれわれにはほとんど見ることができない世界だ。中国が勃興しようが、政治的には依然として「トランスアトランティック(環大西洋)世界」が世界を動かしており、それは中東、アフリカの支配を基盤にしている。

中東の人たちには欧米人に対して従属意識がある一方で、同時に自分たちのほうが優越しているという認識もある。その根幹に宗教的信念がある。この宗教的信念は非常に政治的なもので、欧米と中東の政治的な関係の中で宗教的な信念が構成されてきた。その関係全体を理解しないといけない。

イスラム教徒はこうお祈りするとか巡礼するといった、儀礼的なことを試験の暗記物のように理解していてもほとんど意味がない。また、日本人の好きな、個人の主観的な信仰を重視する内面的な宗教理解も、イスラム教には通用しない。環地中海・環大西洋世界では、宗教は価値観の優越性をめぐる政治なのだ。

日本のイスラム認識

──日本のイスラム認識には特有の様相があるのですね。

神秘主義哲学者、井筒俊彦さん(1914〜1993年)の存在が大きい。井筒さんは、日本の宗教思想と似た部分をイスラム思想から見つけて、わかる部分だけを日本人に理解させようとした。イスラム教の宗教思想がさまざまに枝分かれする中には神秘主義もある。禅の修行や、個人の内面的修養を重視する日本では、その部分だけが理解された。重要ではあるが、イスラム教の体系の中では末端の部分だ。

基本的にイスラム教は政治権力をめぐる宗教なので、誰が権力を持つのか、国際政治の中の力関係はどうあるべきなのかについて、考え方そのものが扱う。われわれの宗教観からはまったく理解できないので、理解しようとしなかった。

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