日本人は中東から見ると「変わった人たち」だ

世界は「欧米対イスラム」で回っている

──入り組んだ関係……。

池内恵(いけうち さとし)/専攻はイスラム政治思想史、中東地域研究。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程を単位取得退学し、アジア経済研究所に入所。国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年から現職。英ケンブリッジ大学客員研究員、エジプトのアレクサンドリア大学客員教授などを歴任(撮影:今井康一)

欧米とイスラム世界はずっと絡み合った関係の中で、政治や社会を成り立たせてきた。特に米国は移民の国であり、欧州からばかりでなく、イスラム世界からも中東とのつながりを持ったままの人々を受け入れた。

イスラム世界の中の少数派、つまりユダヤ人やアルメニア人やギリシャ人などが米国に移住すると、逆に超大国を動かして中東に介入し支配しようとする。欧州から米国に来た人たちも、かつての西欧諸国の植民地主義の感覚を無意識に引き継いで中東を持ち物のように思い、支配する場所、利益を得る場所と考える。

それに対して中東の現地の人たちは欧米の人たちをいかに引き込み、中東で自分にとって有利な社会を作るか腐心する。欧米のおカネや権力を引き込むことができた人が中東の社会の中では指導者になる。

中東の人たちは欧州や米国に移民で行っても、ルーツを忘れない。たとえばエジプトにいるときはエジプト人なのだけれど、欧州や米国に拠点を持っているという人は当たり前のようにたくさんいる。両方を股にかける人たちによって自然にイスラム世界と欧米世界はつながる。

イスラム教の政治思想も発展してきた

──宗教思想も入り組む?

欧米とイスラム世界の関係の中で、イスラム教の政治思想も発展してきた。欧米の自由主義的な価値観に対して、イスラム世界では自らの規範の絶対的な正当性や優越性を主張する者が多くいる。

そこから正しい者が力も持つべきだとして実力行使に及ぶ勢力も出てくる。それが近現代の国際社会の激動の大きな要素になる。

欧米の価値観やシステムが世界に広がり、イスラム世界もそれにのみ込まれ、利益を享受し、あこがれも強く抱きながら、しかしこれまでの優越意識が今もあり、コンプレックスが強くある。そういう生々しい関係と宗教思想の発展は絡んでいる。

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