憎み合う同居より、思いやりある別居を選べ 二世帯同居の苦労は経験しないとわからない

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私はこれまで「同居した者でないと、その大変さは理解できない」という言葉を親側からもお嫁さん側からも聞き、同居の嫁姑関係について考えさせられました。最初はどちらもうまくやろうという意欲をもって同居が始まっても、同居することで見なくともよいお互いの欠点が目についたり、神経に触ったりしています。「同じ屋根の下にいる」だけで、顔を合わせなくとも気を使うのです。

せめてスープが冷めない距離でもあれば、その大変さから逃げる時間と空間があり、それが心のバランスを取り戻すのに非常に大きな役割を果たします。同居だと同じ屋根の下に"相手"がいるというだけで嫌悪感が増大し、それこそ箸の上げ下げまで、トラブルの原因になります。最初からの同居なら徐々に刷り込まれる遠慮や気遣いが、途中からだと、最初から我慢の限界を超えるものとして、目の前に現れます。

あなたが同居する場合、一番の問題は姑さんの覚悟です。「おしん」の時代は嫁側ばかりが我慢を強いられましたが、今はむしろ「姑になったおしん」のような親のほうが目につくほどです。私には卑屈とまで見えるほど、親側からの気遣いや心配りをする人が多くなりました。別居・同居を問わず、親のほうが大変だという人も多い時代になったのです。

77歳で、家事が嫌になったあなたのお姑さんは、そんな変化に気づいていないのではないでしょうか。彼女の若い頃は嫁が夫の親と同居するのは当たり前の時代でしたが、きっとお舅さんが長男でなく、その経験がなかったものと推察します。それでも今更の同居がどれほど大変か理解していて当然の年齢ですが、自分が経験していないことは想像できないのが問題です。

くねくねした覚悟の姑と同居は無理

私があなたたちの同居は失敗が明らかだと感じるほかの理由は次のとおりです。まずお姑さんは、ご自分の夫のことを「大嫌い」と、子どもたちや嫁の前で言うことをはばからず、「二人きりの生活に耐えられない」とも言っておられます。この年齢まで連れ添って来られたのです。今更好きも嫌いもなく、耐えられないとあなたたちに訴えるのは、軽薄に過ぎます。愚痴くらいはこぼすとしても、それは全部、自分たちの問題と責任とし、夫婦喧嘩は夫婦だけでするものです。

母親がそこまでけなす父親を、子どもたちは尊敬できるでしょうか。同情する子どもはいたとしても、知らず知らずに子どもも父親を見下げるようになるものです。それは子どもの半分を否定する行為にもなります。ダメ夫でも夫を立てている妻は周囲に「彼はそれなりによいところもたくさんあるに違いない」と思わせ、疎かにさせないものです。

失礼な言い方ですがそのような配慮もできず、目先の自分のことしか見えない姑さんが、舅との険悪な関係までお土産に、あなたたちと同居したいと言っておられるのです。加えて年老いた親の元へ娘が帰ってくるということは、母娘の関係はともかく、娘が何もしてくれなくとも安否確認にだけでもなり、心強く思うべきことのはずです。それをうっとうしいなどとは罰当たりです。足るを知ることのない、いつも不満を言っていないと気が済まない傾向がある人とみました。

それにあなたがどんなに体裁よく説明したとしても、スープの冷めない距離から今の所に家を買ったその理由を、普通は察しているものです。あなたがどのような言葉で濁そうと、会うたびにくねくねと同居を迫るお姑さんは、相当鈍いか自分本位の人です。

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