日銀引受けは円安とインフレの悪循環を招く 「安倍新政権」の真意を問う

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インフレが進行すれば、国債の実質残高は減少する。しかし、財政支出の中にはインフレにスライドするものが多いことに注意すべきだ。年金にはインフレスライド条項がある。医療費や介護費も上昇する。公務員賃金も上昇する。したがって、財政赤字が縮小することにはならず、拡大する可能性が強い。

この過程が続くと、資金が日本から逃避し、円安が加速する。輸入価格の上昇によって、国内のインフレが加速する。こうなってくると、日本経済の潰滅(かいめつ)は、確実になる。

以上の議論に対して、「経済活動が活発化し、しかもインフレが激しくならない段階で止めればよいではないか」との意見があるだろう。しかし、抑えられるだろうか? それは、極めて難しいはずである。

実際、傾斜生産方式によるインフレは、49年度予算において超緊縮財政が行われたためにやっと終息した。これは、「ドッジライン」と呼ばれる強硬策である。占領軍の絶対権力の下ではじめて可能になったものだ。現代の日本では、こうした政策は到底取りえないだろう。

だから、日銀引受けによる財政支出拡大を行えば、それをコントロールすることはおそらく不可能だ。すると、円安とインフレの悪循環が際限もなく続く。

しかも、40年代にはなかった資本の海外逃避が現代の社会では生じる。それを食い止めることは難しい。

ここで注意すべきは、国内のインフレを伴う円安は、円の実質価値を低下させないことだ。したがって、輸出を増やすことにはならない(この点については、誤った議論が多い)。日本経済は破滅への道をまっしぐらに進むだろう。

カーメン・M・ラインハートとケネス・S・ロゴフは、200年間以上の長期的な経済データを分析し、「国内債務が大きいとインフレになる」「政府は膨れ上がった財政赤字をインフレによって解決してきた」という(村井章子訳、『国家は破綻する』、日経BP社、11年)。日本もこの歴史法則の例外にはなりえないのだろうか?

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