オバマ大統領の広島訪問は核廃絶への一歩か 「核なき世界」は2009年より難しくなっている
一方、核軍縮の賛成派は、オバマ大統領の訪問が、滞っている交渉プロセスに新たな息吹をもたらすと期待している。
広島県の湯崎英彦知事は「今、核兵器廃絶に向けた動きが停滞している中で、もう一度それを再起動してゆくという契機になる」と述べた。同知事は、オバマ大統領に謝罪を執拗に要求していたならば、広島訪問が実現しなかったとの見方も示した。
しかし、オバマ大統領が核軍縮に向け、ほんのわずかな進展しか見せておらず、米国の核兵器の近代化に多大な支出をしていると批判する人たちもいる。
核なき世界の実現は困難になっている
「議論の余地はあるかもしれないが、核なき世界の実現は、オバマ大統領が就任したときよりも、難しくなっている」と、ブッシュ前政権下でアジア政策のアドバイザーを務めたリチャード・フォンテーン氏は、あるシンクタンクの会合でこう述べた。
オバマ大統領の側近は、1期目にロシアと核兵器を大幅に減らす新戦略兵器削減条約(新START)を締結し、昨年はイランと核兵器に関する合意に至るなど、具体的な業績を成し遂げたと反論する。
日本は、世界で唯一の被爆国として独自の立場を強調し、軍縮を唱えている。しかし、拡大抑止力として米国の核の傘に頼っている。
また、日本は核兵器所有が自らの平和憲法に反することはない、との立場を長年維持している。しかし、核兵器所有の可能性は除外している。
結局のところ、オバマ大統領の広島訪問は、心理検査ロールシャッハ・テストのようなものかもしれない。それは、見る人の傾向によって、物の見方も変わってしまう。
「反オバマ派は、謝罪が実際になくとも、『謝罪旅行』と呼ぶだろう」と、マサチューセッツ工科大学のリチャード ・サミュエルズ教授はみている。
「戦争とその結果については、誰もがとがめられるべきだとオバマ大統領が主張しても、日本のナショナリストは、大日本帝国と日本国民の正当性を裏づけるものだと宣言するだろう。そして、米国の新たな投資や核抑止力をオープンに受容する日本の姿勢にもかかわらず、平和主義者は核兵器廃絶に向けた一歩とみなすだろう」
(Linda Seig記者、Matt Spetalnick記者、翻訳:高橋浩祐、編集:伊藤典子)
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