オバマ大統領の広島訪問は核廃絶への一歩か 「核なき世界」は2009年より難しくなっている

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日米の当局者は、両国のリーダーが戦争の犠牲者を追悼するとともに、過去を掘り起こすのではなく、現在と未来に焦点を当てる方針を明確にしてきた。

元外交官の沼田貞昭氏は「戦争犠牲者、とりわけ原爆犠牲者への追悼を継続する過程の中で、また世界で核兵器廃絶を目指そうとしている過程の中で、これは重要な出来事だ」と述べた。

「世界的な反響がある未来志向のアジェンダに焦点を当てるため、両国は熱心に取り組んできた」

日本へのプレッシャー?

謝罪表明がないにしても、オバマ大統領の広島訪問は原爆投下の人的損失がどれほど大きいのかを浮き彫りにするほか、日本に対し、自らの戦争責任と残虐行為を率直に認めるようプレッシャーを与えてくれると期待する者もいる。

日本の度重なる謝罪にもかかわらず、隣国の中国と韓国は、日本が先の戦争についてより真摯(しんし)に反省する必要がある、と度々不満を述べてきた。

「言外に込められた意味の1つとしては、『私が広島に行き、米国内で批判を浴びるのであれば、あなた方ももう少し努力して過去の行為を認めてもいいのではないか』と日本の現職と将来の指導者らに伝えることだ」と、ある米当局者は匿名を条件にこう話した。

大統領の広島訪問は、ホワイトハウスでも熱く議論された。とりわけ、今年が大統領選挙の年となり、国内的に予期せぬ負の結果がもたらされる不安があるため、なおさらだった。

安倍政権は歴代内閣が過去に表明した謝罪を踏襲してきた。しかし、将来の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないとしている。

「私たちは、(日米の)和解を成功裏に進めてきた。戦争がなぜ起きたのかについては、歴史家に任せたい」。元外交官の宮家邦彦氏はこう述べた。

オバマ大統領が謝罪しなければ、日本は被害者意識を持ち続けることになるとの批判の声も上がっている。

「日本政府が今行っていることは、日本兵が残虐行為を働き、日本が国全体として侵略戦争を行ったことの否定だ。政府は日本の戦争行為を浄化しようとしている」と、広島平和研究所に勤務する歴史家、田中利幸氏はこう述べた。

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