絶好調カカクコム、10年ぶり新社長の課題 「高収益・急成長」を続けられるか

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課題は、カカクコムの祖業である「価格.com」だ。「食べログ」が好調な一方、「価格.com」の成長力に陰りがみえる。2015年度の売上高は前年比4%増の209億円で、売り上げ規模と利益率では「食べログ」を上回る主力事業だが、成長性という観点ではやや物足りなさも感じられる数字だ。

しかし、カカクコムも手をこまねいているわけではない。

「価格.com」の成長を再加速させる施策は大きく2つ。取扱いジャンルの拡大と海外展開だ。取扱いジャンルは、従来からの主戦場であるパソコンや家電に加えて、手数料の利幅が厚い消費財分野を強化。生活雑貨やインテリアの価格比較が人気で、売上高に占める消費財の比率も3割以上に高まっている。

海外展開では、インドネシアやインドでユーザーの獲得を進めており、海外ユーザーは約730万人。「来年3月に1000万人を達成したい」(田中社長)と目標を掲げており、今後は店舗からの収益獲得を加速する方針だ。

新社長は「社長よりも社歴が長い」

田中実社長は自らへの依存度が高まってしまうのを避けたいと考えたようだ(撮影:大澤誠)

1997年創業のカカクコムは今期が20期目。節目の年に、経営体制も大きく変わる。2006年に就任した田中実社長が今年6月で在任10年となるのを機に経営を若い世代に引き継ぐことを決めた。後任は営業部門を管掌してきた畑彰之介取締役。6月の株主総会を経て、正式に決定する。

田中社長は「これ以上、私が社長を続けると、精神的な部分で権限が集中してしまう。次に譲るときにドタバタが起きるのは嫌だと思った。若干の余力を残してリタイアするのが矜恃かな」と決断に至った心境を明かした。

畑取締役は1974年生まれの42歳で、2001年にJTからカカクコムに転じた実質的な生え抜きだ。1962年生まれの田中社長は「(畑取締役は)自分よりもカカクコムの社歴は長い。会社のことを深く理解している」と評価する。畑氏は「AIやシェアリングエコノミーなどが出てきて、ユーザーの行動様式が変わっていくところに、気持ちを新たにして再スタートする」と抱負を述べた。

田中社長が就任した2006年当時、売上高は29億円、営業利益は7億円だったのが、「価格.com」と「食べログ」を成長エンジンに、10年間で売上高は14倍、営業利益は25倍にもなった。

次の10年にどのような成長戦略を描くのか。カカクコムは、3年後の2018年度をメドに旅行情報サイトや金融事業など「価格.com」「食べログ」以外を売上高の2割程度(足元は1割程度)に引き上げる方針を打ち出している。2つの主力事業をさらに成長させると同時に、依存度を下げるという一筋縄ではいかない取り組みだ。新社長の手腕が、初年度から問われることになる。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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