「催眠商法」は一体どのように生まれたのか 日本における自己啓発セミナーの源流

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倒産騒ぎとあわさって同社に債権者が集まり、債権者会議は大混乱した。同社の安売り販売はメーカーとのつながりゆえではなく、単に原価割れ販売にすぎないと告白した。また、赤字は44億8000万円で、負債額は40億5800万円に増え発表された。1971年時点で、戦後最大の連鎖倒産事件となった。

新製品普及会と氏その後

その後も、新製品普及会の元社員らが、同様の商売を始めていった。公民館などは、SF商法関連業者への貸出を禁止するようになったものの、バスを活用し、その内部で販売を続けるところもあった。

しかし、驚くべきは、島津幸一氏の華麗なる復活だった。氏はAPOジャパンに入社し、副社長になった。APOは、会員らを募り、自動車エンジンの排気ガスを減少させる商品を販売し、それを広めていた。「自動車エンジンの排気ガスを減少させる商品」からは想像もつかないが、同社はマルチ商法の元祖と呼ぶ人もいる。

APOで氏は教育担当として販売員を育て上げた。潜在能力に気づき、活用すれば、売れないものはない。こうした教育は、新製品普及会から繰り返された内容だった。同社は独禁法違反に問われ倒産する。そのとき、島津氏は、米国に渡った。あのジョセフ・マーフィー博士に師事するためだった。

ジョセフ・マーフィー博士について

もしあなたが書店に行くのが好きであれば、あるいは自己啓発書の類に興味があるとすれば、『マーフィー眠りながら成功する』『マーフィー100の成功法則』『マーフィー無限の力を引き出す潜在意識活用法』といった書籍を見たことがあるかもしれない。

いわゆる潜在意識の活用による成功哲学の祖、といってよい。固有名詞は省くものの、日本でも成功者のうち、マーフィー博士の書籍を愛読していたと述べる人は多い。超心理学・精神法則に関する権威者とされ、今でも熱心な信奉者がいる。

ところで私も、マーフィー博士が開発したとされる音源を多数持っていた(探せば自宅のどこかにあるだろう)。総額は数十万円分にのぼる。私は「この手の教材に惹かれる人たちを研究するために入手した」と書きたい衝動に駆られる。しかし、実際は私も「濡れ手に粟で成功したい」と思ったにすぎない。だから私はこの手の教材を語る資格があると信じている。が、ここでは、私にはあわなかった、と述べるに留める。

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