この会社は年率30%で売り上げを伸ばしている――というと、トンデモナイ好業績の企業に見えますが、一体元々の売り上げがいくらかによってインパクトが違います。
同じ30%の売り上げ増加であっても、
年商1億円の会社では3000万円
年商10億円の会社では3億円
年商100億円の会社では30億円
に相当します。そうなると年商1億円の会社が売り上げを30%伸ばしたとしてもその実際の増えた売上金額はわずか3000万円に過ぎず、一方100億円の会社にしてみればわずか0.3%の売り上げが増加したこととインパクトは等しい。
これをもって年商1億円の会社を「急成長会社です!」と説明され、100億円の会社を「もう終わってます」、と説明することがフェアだ・・とは思えませんよね。同じ割合でも分母がいくらなのか、という問題があるわけで、メディアや我々エコノミストはしばしばこの点を意図的に隠すので要注意です。
「比喩に隠されている意図」とは?
こういう例もあります。
昔、東京電力のHPに乗っていたのですが、自然エネルギーではとても原子力発電の代わりにはならない、とする説明のなかにこういう表現がありました。
原子力発電所一基(100万KWレベル)と同等の電力を自然エネルギーで発電するには、山手線の内側の面積と同じ広い敷地にソーラーパネルを施設することが必要です。
とされていました。
東京ドーム何個分と同じ手法が使われています。山手線の内側を全部ソーラーパネルにするなんて相当広くて大変だろう→やっぱり原発は必要だ、と考えさせるバイアスがかなり明確に存在します。
ではこれに加えて…
山手線の内側の総面積は65平方キロであるが、東京都全体の面積は2188平方キロ、因みに北方領土の択捉島の面積は3000平方キロである。
と付け加えたらどうですか?日頃択捉島の面積など意識はしていないわけでさすが、地図上で見るとあんな小さな島の面積のわずか50分の1の面積にしか匹敵しない。となると、こういう比喩をすること自体が不適切と言わざるを得ません。
ということで、こういうドーム何個分、山手線の内側の面積に匹敵する…などという比喩表現は本当に要注意。その数字が表しているディメンションは一体何なのか? ということに常に注意していないと簡単に騙されてしまいます。
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