ドル円は戻したとしても112円が精いっぱい 「円売り介入」は実際には不可能である

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11日に決算説明会を行ったトヨタ自動車。注目の2017年3月期は大幅減益予想となることを明かした(撮影:尾形文繁)

円高基調に歯止めが掛かりつつある。これを好感する形で日本株も安値から戻し始めているようだ。日本株の動向を左右するのは、ドル円の動向である。これは日本経済の構造が変わらない限り、今後も続くだろう。ドル円次第で日本の輸出企業の業績は大きく左右される。そして、日本株の方向性もその結果に左右されることになる。

筆者は本欄で、「2016年は年初から円高に向かい、メインシナリオで108円、行き過ぎると102円まで上昇する可能性がある」としてきた。また、ボトムの時期を5月ごろとしてきた。ここまでのドル円の動向は、本欄で指摘した見通しにほぼ沿った展開にある。今後については、102円程度までの円高はあるかもしれないが、それ以上の円高局面がすぐに到来するということにはならないだろう。とはいえ、戻しても112円が精いっぱい。110円以上の水準になれば、そこは全力でドル売り・円買いをすべきと考える。輸出企業の経営者の方で本欄をお読みの方は、ぜひ参考にしていただきたい。

トヨタ自動車の想定レートは105円

11日の引け後には、日本の代表的な輸出企業であるトヨタが決算を発表した。注目が集まったのが、2017年3月期の業績見通しである。営業利益見通しは前期比40.4%減、当期純利益の見通しは同35.1%減となっている。この数値をみて非常に驚いたのだが、ドル円の想定レートは105円とのことである。今期と同じ水準の利益を上げるためには、130円程度のドル円水準が必要になるとの試算もあるようだ。

このような水準にドル円が戻ることはないだろう。したがって、為替要因を補うほどの収益基盤の拡大などが見られないようだと、輸出企業の業績が改善する可能性はほとんどないと考えなければならない。つまり、日本株全体の動きはきわめて乏しいものになると覚悟しておくべきだ。逆に考えれば、ドル円が円安なればよいともいえる。しかし、それは、すでに何度も解説しているように、米国のドル安政策が優先されるため、残念ながら、日本政府が望むような円安にはならない。

先のG20でも確認されたように、通貨安競争は避けるべきであり、そのための円売り介入は認められないとのスタンスで一致している。麻生財務相は「円売り介入の用意がある」としているが、実際には不可能であることを理解した上での口先介入であることは、ご自身が十分に理解されているはずである。

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