GAPが到達できなかった形に挑戦する 柳井氏後継候補の1人 堂前 宣夫(下)
「ただ、やはり我々は挑戦者。デパートも含め、それぞれが競合ですね。ユニクロはファストファッションじゃなくベーシックカジュアル。ですから昔のGAPが目指して結局到達できなかった形を向いていると思います。つまり、ファッションに振れすぎず、機能性とベーシックを複合させたファッションを打ち出す。これがユニクロの目指すべき姿ですね」
常識人と思っている。だから変人
FRはとにかく柳井の印象が強烈だ。会社の方針全てが柳井の一存で決まると考えらやすい。だが店舗戦略や経営方針などは全て「話し合いながら決める」という。「色々な場で常に話し合いをしています。でも、ぼくと柳井さんが話し合うだけじゃないですよ」。ユニクロの国内・アジア事業を統括する大笘直樹、商品MDを一手に担う中嶋修一なども交えて日々議論が行われる。
彼らは、堂前も含めて現在のFRのナンバー2群とされるライバルたちだ。大笘は柳井の要求を粛々とこなす優等生。中嶋はどことなく隙があるようにも見えるが、柳井だけでなく人に好かれるタイプだ。では堂前はどうか。他の「ライバル」の違いはどこにあるのか。
自らの性格について、堂前は「自分では常識人だと思っている。だからこそ変人なんだと思います。すごい常識人だと思っているのが、間違っているのかもしれません」と木で鼻を括ったような答えをする。社内の評判は「頭がよくて誰も太刀打ちできない」。奥さんからは「悪い意味で典型的なB型人間」と言われている、と笑う。
「泳げないものは沈めばいい」――この言葉通りではないが、堂前と同時期に入社をした若きリーダーの中で、現在までユニクロに残っている者は数少ない。柳井に社長になるよう要請され固辞し続けた元副社長の沢田貴司(97年5月入社)や、かつて社長を務めたが玉塚(98年12月入社)は、02年、05年にそれぞれFRと袂を分かっている。
「次世代リーダー?うーん、微妙」
堂前の場合は、柳井と衝突したことは一度や二度ではないという。しかも07年には柳井と意見が合わず、FRを飛び出していったという「衝撃の過去」がある。ドアをあけて出て行くことだけなら、過去にも複数の役員がそうしている。だが、堂前はFRに復帰し、「柳井さんには放っておかれてますから」などという。
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