GAPが到達できなかった形に挑戦する 柳井氏後継候補の1人 堂前 宣夫(下)

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ニュージャージー出店から約2か月。ソーホーの期間限定店での成功を転機に、ここから本格的な店舗を立ち上げようという話が持ちあがった。年末には柳井がニューヨークへ。これまでとは全く異なる「グローバル旗艦店」を作ろうという計画を立ち上げる。「全く新しいコンセプトの旗艦店出店に当たり、マーケティングとか店舗設計をどうしようかということで、柳井さんとぼくとでそれぞれ人材にあたり始めた」。

佐藤可士和、片山正通という当代一流のクリエイターが「ユニクロ」の下に結集したのはこの時だ。そして臨んだ翌06年11月ソーホーの店舗は大盛況。堂前は彼らの絶大な支援もあって、ニュージャージーの失敗から一転、成功を収めた。「ただ一生懸命やっただけなんです」。もがき苦しんだ堂前が、グローバルブランドとしてのユニクロを欧米で「再出発」させた瞬間でもあった。

因縁の地で再挑戦

不況の時ほど売り上げが伸びると言われるユニクロ。その意味では、FRにとって、08年のリーマンショックの激震は決してマイナスではなかったといえる。事実、国内では「ヒートテック」などが大ブレイク。09年8月期には経常利益で初の1000億円台に乗せた。今期は1400億円台が視界に入る。国内は当面のピーク感もある今、成長の舞台は海外に映りつつある。アジアは中国などを中心に、成長の礎ができつつある。だが、柳井は手綱を緩めない。

米国でも、ついに昨年10月、ニューヨークの5番街に超大型店を出店。5番街店の年間賃料は15億円以上ともいわれ、利益を出すのは容易ではない。事実、前12年8月期の米国部門は経費が先行、赤字だった。堂前が柳井会長から課せられたミッションは欧米事業で1000店舗、売上高1兆円の達成。早期黒字化どころか、堂前の課題は一段と重くなっている。

今年の夏から秋にかけ、堂前は再びニュージャージーにいた。「因縁の地」。堂前やFRが苦い経験をした場所だ。前の場所とは違うモール内に、1200坪とそのSCの中では最大の店舗を出店した。息も切らずに10月には西海岸にサンフランシスコ店をオープン。今期の米国事業は年間20~30店ペース。西海岸、ニューヨーク近郊へと積極的にドミナント出店する方針だ。

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