先月、香港ディズニーランドは100人のリストラを余儀なくされることを明かした。本来は書き入れ時の「五一假」で、香港では昨年に比べて観光客が半減したと現地メディアは伝える。香港への中国人観光客は、特に昨年の後半以降は明確に減少傾向にあり、今年2月の時点でも、すでに前年比で4分の1に減少していた。
その原因は何か。2014年の雨傘運動から続く香港の「反中」的な動きに対し、中国内では「反港」的な感情が広がっており、旅行客の動向にも影響を与えているとされている。「以前は月に10件はガイドの仕事があったが、いまは3件か4件。ほかのアルバイトをしないと生活できない」――。主に中国人観光客を相手にしていた香港人の旅行ガイドは、そんな厳しい現状を香港のメディアに語っていた。
マカオについても、習近平政権が進める厳しい反腐敗運動が痛手になっている。カジノで豪遊する中国人の数が急減したことによって、中国人観光客の人出は前年比で3割以上減少した。
台湾の観光地、航空会社が受け始めた「打撃」
そしていま、台湾が新しい「犠牲者」になろうとしている。台湾で民進党・蔡英文新政権の発足に向けて、目に見える形で対中関係の「変化」を実感できるのは、中国大陸からの観光客「陸客」の減少である。中国との融和路線を掲げる国民党から、台湾の主体性を追求して「一つの中国」という中国側の求める原則を受け入れない民進党への政権移行に際して、中国がもっとも容易かつ効果的に打てる手が、観光客数の操作だからだ。
多くの台湾メディアに「五一好冷!(5月1日休暇は寒い!)」という見出しが踊った。報道によれば、観光客のメッカである阿里山では大陸からの団体客が急激に減り、ホテル業者などから悲鳴が上がっているという。普段は中国人で大にぎわいの台北郊外にある九份でも、人がまばらな状況だったようだ。
また、中国から台湾に行くには、国家間に必要な「ビザ」ではなく「通行証」と呼ばれる中国政府の渡航許可が必要になるが、現在申し込みが行われている台湾通行証の申請件数は、5月以降の旅行分については前年比で約6割減。蔡英文政権が発足した6、7月以降に急減はさらに目に見えて明確になると予想されている。
中国人の乗客をあてに大陸路線の拡大方針を続けてきた台湾の航空会社も、対応を余儀なくされている。中華航空、エバー航空など、台湾の主要航空会社4社は台湾の交通局に10月末までのフライト計画を提出したが、いずれもフライトを削減するか、大型機から中・小型機への変更を実施。全体では週711便から計29路線の削減となっている。
現時点では、中華航空やエバー航空にとって中国路線はドル箱事業であり、営業利益全体の15%を占めるとされる。また、規模の小さい復興航空は3割、遠東航空は5割を中国路線に依存しているため、航空会社にとって中国人客の減少のインパクトはより大きなものになる。
中国人観光客の台湾訪問でいま話題になっているのは「技術性遅延(「技術性嫌がらせ」とも言う)」という方法だ。
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