今日の香港、台湾は、明日の日本かもしれない――。中国人旅行者が海外にこぞって出かけるメーデー後の長期休暇「五一假」の現状を見ていると、そんな想像が脳裏に広がった。
岸田文雄外務大臣の訪中がなんとか実現し、いま日中関係は総じて改善基調にある。アベノミクスの限界が見えてくるなかで、外国人観光客の急増は、日本経済の数少ない「明るいニュース」だ。政府も強気に2020年に年間訪日外国人4000万人の目標を掲げている。特に中国人観光客の急増はひときわ明るい輝きを放っている事象だ。
そこに水を差すつもりはないが、ちょっと立ち止まって考えて欲しいところもある。中国人観光客の流入という現象は、そんなに甘いものじゃない。それは、日本自身の努力では容易に手の届かない中国自身の国民感情や政府の政策、各国の対中関係に極めて大きく左右されるからだ。
かつて大きく潤った土地が、いまは様変わり
中国人海外旅行者は年間1億人を超えたとされ、世界の海外旅行者の10%を占めるという統計もある。どの国も中国人観光客の到来を願っているいま、中国にとって、13億人の人口を生かしたこの「購買力の輸出」は、外交上の戦略的ツールでもある。そしてその人数は、ある程度は、水道の蛇口をひねるようにして、増やしたり、減らしたりすることもできるのだ。
かつて中国人観光客で大きく潤った土地があった。香港、マカオである。どちらも一度は大変に美味しい思いをしたが、そのために増やしたキャパシティがいま大変な重荷になっている。
現在、香港のホテルはどこも最盛期の半値以下の格安になった。日本で大阪のアパホテルが1泊2万円に高騰したとの話も聞くが、昔、香港でホテル探しに苦労して高い値段で小さなホテルに泊まった日々を思い出す。
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