トヨタ「オーリス」今さらHVを追加した理由 実は4代目プリウスのDNAが宿っている

拡大
縮小

ただ、個人的にはそれよりも衝突安全支援パッケージ「トヨタセーフティセンス」が上級版「P」ではなく普及版「C」なのが納得いかない面はある。今回も相変わらずグレード展開に踏ん切りがつかないようで、1.5L/1.8Lガソリン、1.2L直噴ターボ、そしてハイブリッドと販売台数の割には大所帯。思い切った割り切りも必要だろう。販売的には1.5Lを捨てきれない気持ちもわかるが、プレミアム系はハイブリッド、RSはターボに絞るぐらいの思い切りはあってもよさそうだ。

もともと2代目オーリスの発売当初は小排気量エンジン+過給機(ターボ)がトレンドの中、1.5L/1.8LのNAモデルのみと言う普通すぎるラインナップ展開がアダとなった部分はある。当時、僕は自動車雑誌の編集者だったが、記事には「スポーティなグレードの『RS』は走るシチュエーションを選ばないハンドリングで快適性や静粛性のレベルも高いのだが、思わずニヤッとするような『ワクワク/ドキドキ感』は感じられない。つまり『よくできたスポーティハッチ』で終わってしまっているのが残念な部分」と書いている。

今さら感がぬぐえない?

もともと欧州では高い評価を受けているクルマだけに、ハイブリッド仕様の追加によって販売テコ入れになる部分はあるだろう。ただ、日本では発売タイミングの関係でプリウスのほうが先に出てしまったので、今さら感が出てしまっている。あと、2年いや1年半早く登場していれば、とも感じる。

トヨタの上級FFハッチバックを振り返ってみると、どれも存在感が薄かったように感じる。「2BOX上級生」と言うキャッチで登場したカローラFXは横置き4A-Gを搭載し、グループAで活躍した記憶があるが、2代目、3代目はあまりパッとしなかった。

その後継モデルとして登場したカローラ・ランクス/アレックスは、セリカ譲りの190馬力の2ZZ-GEエンジンと6速MTを搭載したスポーツモデルもシッカリと用意されていたが、これも販売はイマイチ。ただ、ホンダ・シビックや日産ティーダのように、日本市場を諦めることなく地道に販売を続けてきたことは評価したいところだ。

あるトヨタ関係者は「トヨタはハッチバックの投入対して非常に慎重です。大ヒットしている『アクア』も『本当に勝算があるのか?』と導入するまで色々と大変でした。オーリスハイブリッドは欧州でも高い評価を受けていたので、日本市場にも早く展開させたかったのですが」と語る。

現在、Cセグメントのハッチバックのトレンドは「ハッチバック実用性+スポーティ+個性的」である。これまでも素性は決して悪くなかったオーリスだが、ハイブリッドと言うトヨタ独自の個性をプラスしたことで、「単なるいい人」から脱却することを期待したい。

山本 シンヤ 自動車研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT