1 政治 高原明生、服部龍二編
2 経済 服部健治、丸川知雄編
3 社会・文化 園田茂人編
評者 宮崎 勇 元経済企画庁長官
日中国交正常化40年(1972~2012年)の歴史の中で、日中関係はいかに深化したか。全3巻で、政治(1)、経済(2)、社会・文化(3)の3面から、それぞれの分野の専門家が論じている。
政治の分野では、日中国交正常化から民主党政権の誕生まで、40年間の日中関係における16の重要トピックを取り上げ、両国の国内事情と国際環境を含む諸要因を分析し、冷戦終結後のグローバル時代の日中関係を見据えて論じている。高所遠望の卓見が読み取れる。
経済の分野では、日中国交正常化から40年、誰もが予測できなかったほどの中国経済の大きな変貌に日本がいかにかかわってきたのか、政府や企業関係者の論考をも収録し、経済交流の成果と課題を多角的に検討し、新しい日中経済関係を展望している。経済大国化した中国と日本、拡大化する利益と摩擦をみつめている。
そして、社会・文化の面では、パンダの来日から池袋チャイナタウン構想まで、40年間の特筆すべき社会・文化的現象を取り上げて、日中相互のイメージの変容とその政治、経済領域への影響を考察し、社会・文化的視点から日中関係を俯瞰している。そこでは、深化する日中交流と複雑化する相互認識が論じられている。
日中関係の展開を総合的にとらえ、詳細に検討する、これまでにない試みだけに、中国事情を知りたい人にとって一読の価値がある書である。
蛇足的だが、私個人の「日中関係史」の一端に触れたい。