自民・船田氏「憲法改正、安倍首相とは一線」

改正のキーマンが「あの事件」も大胆に語った

船田:憲法改正の発議の条件を「国会議員の過半数」とすると、先ほども申し上げた通り、そのときどきの政権でいつでも改正の発議ができる可能性が高まります。これは憲法の安定性から見るとよくありません。

しかも、国会議員の2分の1程度しか賛成していないレベルの法案は果たして緊急性があり重要なトピックなのかどうか。国民投票になった時、過半をとれるでしょうか? 私は無理だと思います。あくまで草案ですから、必ずしも従う必要はないのですが、私としては、憲法の安定性を守る意味でも3分の2以上か、少なくとも5分の3以上の国会議員の賛成が必要ではないかと思います。これは前から持論として持っています。

有馬:たとえば3分の2以上にするということは、野党の議員も巻き込むほど重要な案件だということですよね。しかし、今の自民党では「安倍首相に右に倣え」で、過半数でいいという議員が多いのではないでしょうか。

船田:そうかもしれません。それこそ、3分の2くらいかもしれませんね。

天皇は「日本国の元首」か

有馬 晴海(ありま はるみ)/政治評論家。1958年、長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立、政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰、国民にわかりやすい政治を実践

有馬:天皇についての記述はいかがでしょう。現行憲法の第一章第一条では、天皇は日本国の象徴と定めていますが、草案(第一章 第一条)では、日本国の元首である、と規定しています。

船田:私は、元首と決めることについては疑問を持っています。世界的な常識では、①象徴としての存在②世俗的な政治権力、の2つを併せ持つのが元首です。日本の場合、天皇は国事行為において表面的には国家権力を部分的に行使する形をとっていますが、形式に過ぎません。ですから、元首というにはやや無理があると思います。

有馬:第21条の、言論などを含む表現の自由についてはどうですか? 結局、憲法でも改正することになるのでしょうか?

船田:表現の自由についてはよほど気をつけないといけません。基本的な人権の部分でもあり、どの国においてもセンシティヴな部分です。私は憲法で規制するのはよくないと思っています。ただ、まったく無制限に認めてもいいというわけでもありません。自民党の中で「表現の自由については厳しくするべきだ」という意見はそれほど多くないので、私はそれについてはあまり心配していません。

参議院で与党圧勝でも、国民投票まで2年近くかかる

有馬:では、いよいよ憲法9条についての話ですが、その前に今後の「タイムスケジュール」についてお聞きします。7月に参議院選挙があり、仮に自民党が議席を増やす→草案を基に、優先順位が高い項目を審議し修正→野党の一部も巻き込んで議員の3分の2以上で憲法改正の発議までこぎ着けたとして、「一回目の国民投票」はいつになるでしょうか?

船田:不確定要素が多いので何ともいえませんが、もし参議院選挙で与党が3分の2を上回って勝利したとしても、2年近くはかかると思います。

有馬:ということは、安倍総裁の任期である2018年9月ギリギリと言うことになりますね。

船田:昨年、当時の民主党とも合意して、さきほど申し上げた緊急事態、環境権、財政の3つのカテゴリーに議題を絞り込むことになったわけですが、あの時点でも、さらに絞り込むか、あるいはこの3つについて現行の憲法をどう具体的に変えるか、などの肉付け作業に約1年以上はかかるし、そこから投票までを含めると2年ということになります。

しかし、そんな時に昨年の衆議院憲法調査会での「6月4日の事件」が起きてしまったのです。私もこれをきっかけに憲法改正推進本部長の職を外されることになりました。安全保障についての平和安全法の議論も、あの時点からストップしたままになっています。

憲法改正を急ぎたいという安倍総理のお気持ちはわからないではないが、憲法改正は野党も巻き込まなければならないので、そう簡単にできるわけではありません。

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