なぜ憲法を改正する必要があるのか
有馬:船田さんは1997年に自民党へ復党して以来、憲法の分野では今や最も経歴の長い政治家のひとりです。現在も党の憲法改正本部長代行という立場でもあるわけですが、まずは改めて、なぜ今憲法改正が必要なのでしょうか。
船田:自民党の憲法改正の議論では、大まかにいうと2つの理由があります。ひとつは「現行の憲法はGHQのもとで作られたのだから、自分たちの手で作り直さねばならない」という意見です。その中には「押し付けられたのだから破棄すべきだ」という人もいますが、私はそうは思いません。
現行憲法が約70年、戦後の日本を形作ってきたことを大いに評価しています。しかし国際情勢は様変わりして、現実にそぐわない部分も出てきたので、変える勇気をもたなければなりません。私は、「現行憲法のほころびを正したり汚れをとったりする」という意味で、「憲法古着論」と呼んでいます。
これに関連して言えば、立憲主義を守るということがとても重要です。その時々の政権によって解釈改憲がまかり通ることは避けなければなりません。今回の平和安全法(安保関連法案)成立における過程での、(集団的自衛権の一部行使を認める)政府の憲法解釈も、いわば「ぎりぎりセーフ」だったのが実態です。こうした事態が続くと、憲法の安定性や信頼性が失われかねません。よって憲法を改正し、改正した憲法には皆が従うという考え方です。「現行の憲法を変えないことこそが立憲主義」だとは私は思いません。
もうひとつの理由は、国際貢献です。従来も多国籍軍の後方支援などでは特別措置法で対応してきましたが、法案の議論から派遣までは約2カ月もかかります。恒久法が必要だとの議論は前からありましたし、むしろこの分野では積極的な国際貢献も必要です。
一方、憲法を見直す際には、国会議員の多数が「これは変えなくてはいけない」と考えるくらい、必要性が高い案件しか変えられないよう、改正へのハードルは高くしておく必要があると思います。そうでないと、結局は、時の政権によって、憲法が頻繁に変わることになりかねないからです。
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