自民・船田氏「憲法改正、安倍首相とは一線」 改正のキーマンが「あの事件」も大胆に語った

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昨年の衆院憲法審査会での「6.4事件」は衝撃的だった。自民党の船田元氏は、憲法学者による違憲表明で憲法改正推進本部長を更迭・降格された。だが、この事件は決して「無意味」ではなかった
第5回は、自民党の船田元・自民党憲法改正推進本部長代行。昨年6月4日の「事件」はなお生々しい。自身が与党筆頭幹事を務める衆議院憲法審査会の参考人質疑で、自民党推薦も含め3人の憲法学者全てが安全保障関連法案を違憲と発言。結局同9月に法案は成立したが、事実上推進本部長を更迭、降格された。
あれから約1年。参議院選挙を前に、船田氏が憲法改正について、自らの立ち位置と思いを語った。日本の未来を考えるうえでも改憲賛成派・反対派の双方に読んでほしい重要なインタビューだ。なお、読み進めるうえで、以下の2つのサイトを参考にしてほしい。
日本国憲法
自民党日本国憲法改正草案

なぜ憲法を改正する必要があるのか

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有馬:船田さんは1997年に自民党へ復党して以来、憲法の分野では今や最も経歴の長い政治家のひとりです。現在も党の憲法改正本部長代行という立場でもあるわけですが、まずは改めて、なぜ今憲法改正が必要なのでしょうか。

船田:自民党の憲法改正の議論では、大まかにいうと2つの理由があります。ひとつは「現行の憲法はGHQのもとで作られたのだから、自分たちの手で作り直さねばならない」という意見です。その中には「押し付けられたのだから破棄すべきだ」という人もいますが、私はそうは思いません。

現行憲法が約70年、戦後の日本を形作ってきたことを大いに評価しています。しかし国際情勢は様変わりして、現実にそぐわない部分も出てきたので、変える勇気をもたなければなりません。私は、「現行憲法のほころびを正したり汚れをとったりする」という意味で、「憲法古着論」と呼んでいます。

これに関連して言えば、立憲主義を守るということがとても重要です。その時々の政権によって解釈改憲がまかり通ることは避けなければなりません。今回の平和安全法(安保関連法案)成立における過程での、(集団的自衛権の一部行使を認める)政府の憲法解釈も、いわば「ぎりぎりセーフ」だったのが実態です。こうした事態が続くと、憲法の安定性や信頼性が失われかねません。よって憲法を改正し、改正した憲法には皆が従うという考え方です。「現行の憲法を変えないことこそが立憲主義」だとは私は思いません。

もうひとつの理由は、国際貢献です。従来も多国籍軍の後方支援などでは特別措置法で対応してきましたが、法案の議論から派遣までは約2カ月もかかります。恒久法が必要だとの議論は前からありましたし、むしろこの分野では積極的な国際貢献も必要です。

一方、憲法を見直す際には、国会議員の多数が「これは変えなくてはいけない」と考えるくらい、必要性が高い案件しか変えられないよう、改正へのハードルは高くしておく必要があると思います。そうでないと、結局は、時の政権によって、憲法が頻繁に変わることになりかねないからです。

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