有馬:新進党時代に、新党さきがけにいた鳩山由紀夫さんと「※鳩船新党」を作ろうとしただけあって、最初から安倍首相との違いが出ますね。「憲法改正はすべきだが、いったん決まったらハードルは高く、という姿勢ですね。
(※鳩船新党 1996年当時あった構想だが幻に。日米同盟や沖縄基地の役割を重要視する船田氏と、沖縄の基地に否定的な鳩山氏の意見が合わなかったのがひとつの原因とされる。このあと1998年民主党が誕生した)
船田さんは昨年10月まで党の憲法改正推進本部長を務めておられましたが、昨年6月4日に衆議院憲法審査会の参考人質疑で、自ら人選した憲法学者も安全保障関連法案を違憲と発言したことがきっかけで、結果的に野党につけいる隙を作ってしまいました。
それはともかく、改正にあたっての「たたき台」である自民党の憲法改正草案(自民党が野党の時代だった2012年4月27日決定)の扱いについては、多くの国民も誤解していると思います。簡単に言えば、大半の国民は草案の内容を国会で議論して、議論が終わったら投票にかけて、すべて現行憲法を変えてしまうのでは、と誤解しているのではないでしょうか。
しかし、実際は違いますね。草案は、まるごと新しいというより、一部新設条文はあるものの、大半は「現行憲法の文言の一部をこういうふうに変える」という性質のものです。また改正の進め方に関しても、一気にすべてを変えるわけではありません。
憲法草案は「レストランのグランドメニュー」
船田:確かに、国民の皆さんの一部にまだ誤解があるのは承知しています。改正にあたっては2つのポイントがあります。ひとつは「逐条審議」です。憲法を一度に変えることはできないので、多くの項目に分けて、一つひとつ審議し、国会で3分の2の多数を得て、国民投票にかけるというやり方です。自民党では緊急事態、環境権、財政の3つを、憲法改正における優先項目にしていますが、実は多くの野党の皆さんも賛成しつつあります。
もうひとつは草案の性格です。私に言わせれば草案は「レストランのグランドメニュー」のようなものです。つまり、国民の皆さんに「(すべて実現させたいので)すべて食べてください」というべきものではありません。緊急性のあるものをまず選んで、野党の皆さんとも草案の内容を協議して、3分の2以上の賛成が得られて初めて、改正の発議ができるということです。
有馬:国民にもその間、考える余裕があるということですね。改めて聞きますが、船田さんから見て、草案は100点満点で何点をつけられますか?
船田:及第点を70点とすると、及第点に届くか届かないか、というところかもしれませんね。しかし、国会で3分の2以上の賛成を得ようとすれば大いなる妥協をしないといけないわけで、私は何年も前から、「もともと、草案は(発議に達するまでの議論の過程で)ズタズタになる運命にある」と言っています。
有馬:なるほど。草案の性格は理解できたとして、いよいよ主な中身についてお伺いします。さきほど憲法を見直す際にはハードルは高くということでしたが、まずは憲法第96条の「憲法改正の発議」についてです。安倍首相は「議員の過半数によって改正の発議ができる」という考えですし、憲法改正草案もそれに沿った形になっていますね(第十章 改正 第百条を参照)。私は過半数ではどうかと思うのですが、これは船田さんの考えからすると、ハードルが低すぎるということですか?
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