孫文の机 司 修著

Books Review

書名からの想像とは裏腹に孫文も辛亥革命も登場しない。机も主役ではない。孫文が使っていた机にまつわる兄弟の物語で「記者」大野日出吉、「詩人」大野四郎、「画家」大野五郎の三つの職業名からなる章で構成されている。時事新報と中外商業の記者だった日出吉(のち和田姓)は二・二六事件で現場一番乗りを果たし、武藤山治とともに「番町会」を糾弾、松岡洋右に頼まれ満州で新聞社を経営して羽振りを利かせた。

四郎は逸見猶吉の名でのんだくれながら多く詩を発表し、満州で有名人となった。五郎はあまり売れない孤高の画家で、絵を描きながら著者と各地を旅した。足尾銅山の鉱害、二・二六事件、「大東亜」戦争などに3人がどうかかわり、どう精神的影響を受けたかが通奏低音のごとく流れ、時に主題となる。有名無名の軍人、小説家、詩人、画家が3兄弟と交錯する中、大仏次郎賞作家による味わい深い昭和史の一断面が粘っこく展開される。(純)

白水社 2310円

  

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 実践!伝わる英語トレーニング
  • 最新の週刊東洋経済
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
消える仕事、残る仕事<br>1億人の「職業地図」

コロナ、AI、脱炭素――。私たちの雇用を取り巻く環境が激変しています。今後、どんな職業を選ぶかは死活問題に。2030年に向け「消える仕事」「残る仕事」36業種、「会社員の価値」がわかる9職種を掲載。本特集が職業を改めて考える機会になれば幸いです。

東洋経済education×ICT