パナソニック巨額損失は日本経済の縮図(上)

「インサイダー」が見たパナソニック論

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ECO・VC賞とは、、パナソニックグループの全購入先を対象に、パナソニック商品へのCO2削減や商品力強化に結び付く案件の中から、特に優秀と認められたものに贈られる賞で、866の案件の中から選ばれる名誉ある賞だ。多くの関係先企業の努力が結集した内容といってよい。

一方、ベストパートナー賞とは、全受賞会社の中で、さらに選出された1社だけに贈られる最高位の賞だ。「鉄やアルミ」と云う素材を生かし、パナソニックに貢献した新日鐡住金の友野社長の話は、「日本の技術の粋を集めた」話題となり、会場も「なるほど、そういうことか」という雰囲気に包まれた。

パナソニックの修正後の今期売上高は前期比7.0%減の7兆3000億円の見通しだ。期初計画よりも8000億円の下方修正であり、悪化の原因の8割がデジタル家電であった、との報告だった。デジタル家電の不振の最大原因は、韓国のサムスン電子やLG電子などとの競争激化だ。薄型テレビや携帯電話などのデジタル家電がまったく振るわない状況から発生したものだ。

その結果、採算が悪化したので繰延税金資産の取り崩し(4125億円)を行うとともに、三洋電機などから買収した太陽電池やリチウムイオン電池、携帯電話事業の「のれん代」の減損処理(2378億円)をした結果が今回の巨大損失の内訳であるとしている。津賀社長は業績回復に向け「売り上げを拡大すれば利益が伸びるという、従来の価値観を変える」と強調しつつ、収益を改善するために、来年度には88の事業部を56に再編、15年度には売上高営業利益率を5%以上にする目標を掲げた。

「Panasonic will be back」?

1部のミーティング続き、2部の懇親会では大坪文雄会長が壇上に上がり、一転して明るい雰囲気となった。今の状況は厳しいものの、創業者の松下幸之助氏(1894~1989)が経験した戦後5年間の財閥解体のときには、松下電器(当時)は数万人の社員が3000人になったどころか、幸之助翁は公職追放になり、同社は倒産寸前になった。そんな歴史に触れながらも、映画『ターミネーター』に出てくるA・シュワルツネッガーの名言を引用した「Panasonic will be back」では、会場は大いに沸いた。

私は、懇親会で主賓の新日鐵住金の友野社長、村田製作所の村田恒夫社長、ロームの澤村諭社長らとも談笑する機会に恵まれた。懇親会での話題は史上空前の7650億円の赤字の危機感をばねにしながらも、意外にも意気盛んなパナソニックとの協力関係と、「これからの挑戦」に話題が集まった。「これからの挑戦」とは日本経済が受けている以下の7重苦への挑戦である。7重苦とは、すなわち

1.極端な円高

2.高すぎる法人税

3.自由貿易協定の遅れ

4.厳しすぎる労働規制と社会保障費負担

5.環境規制の強化(CO2の25%削減)

6.電力不足と電力料金の値上がり

7.資源の高騰

のことだが、世界との競合の中でこれだけの逆風を受けて生き残っていかなければならない日本企業の経済環境は生半可ではないということだ。だが、よく考えれば、これはパナソニック1社がどうこうできる問題ではない。パナソニックの巨額損失は日本経済の縮図という見方もできる。

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