総務省が値上げを指導?携帯販売はカオスだ 実質ゼロ円は健在、ユーザー不在の通信行政
一方で、安倍首相による「通信料金の値下げ指示」(昨年9月)が、なぜ端末代金の実質値上げにつながるのか、各社の価格競争は悪いことなのか、といった不信感は消費者の間で根強い。
昨年の有識者会議は、通信料金を値下げするための原資として、極端に優遇されているMNPに着目。過度な割引を是正し、あまりデータ通信を利用しないライトユーザーや、長年契約している長期ユーザーを優遇すべき、との結論になった。
これを受け、各社とも月額5000円以下のライトユーザー向けプランを出したが「データ量が不十分で、ユーザーはほとんどいない」との指摘もある。また現在、長期ユーザー向けの割引を展開するのはドコモだけだ。KDDI、ソフトバンクは「後発の当社には長期ユーザーが少なく、プラン導入の効果が小さい」と口をそろえる。
もともと長期ユーザー向けに割引をしていたドコモは、4月14日に長期割引の「ずっとドコモ割」の拡充を発表した。
対象ユーザーを従来の5年以上から4年以上に広げたのは評価できるかもしれないが、割引額は月100~200円程度に過ぎない。しかも、データ通信量が月10ギガバイト以下で、10年以上利用する長期ユーザーの場合、割引額は月600~1000円で据え置かれた。
つまり、「料金が安くなるはずだったのに値上げばかりではないか」という消費者の不満は、端末代金が値上げされた一方で、ライトユーザーや長期ユーザー向けの値引きが極めて不十分なことに起因しているのだ。
実質ゼロ円は、まだ終わっていなかった!
4月27日現在、家電量販店で、iPhone6s(2015年9月発売)は、どのように売られているのか。ソフトバンクは「アンドロイド割(アンドロイド端末からiPhoneへの乗り換え)」の場合、実質ゼロ円を下回る。しかも、店内で1万円以上の買い物をすると、1万円分のポイントで還元してくれるケースもある。
ドコモは6sが1万5500円程度、最新機種のSEが648円。乗り換えも機種変も価格は変わらない。ドコモの店員は「総務省のガイドラインのこともあり、みなさん買い替えを急いでいますよ」と教えてくれた。KDDIもiPhoneユーザーが6sに機種変をする場合、実質ゼロ円(下取りを含む)などと明記していた。
「実質ゼロ円」は一見、「実質ほぼゼロ円」になったように見えるが、よくよく聞くと、実質ゼロ円だったり、実質ゼロ円を下回っていたりする。また、現金や家電量販店のポイントを4万~6万円分つける「キャッシュバック」などの熾烈な販売合戦は鳴りを潜めたかに見えたが、現場では再び息を吹き返してきている。
4月5日の行政指導は、端末価格の値上げが不十分という点についてのものだった。しかし、販売現場に十分に行き届いているとは言い難い。しかも、ライトユーザーや長期ユーザーへの値下げが不十分である、といった指導も進めていかなければ、総務省自らが不公平を助長しかねない。ユーザー不在の行政指導では、共感を得ることは難しいだろう。
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