その理由を探る前に、まずは、山田氏が「部下を管理したがる上司」にはメチャクチャ厳しかった事例を2つ紹介したい。
「ホウレンソウ禁止違反」で営業部長がクビ?
① 「部長のメールをなぜ読まないのか?」と詰問した営業課長と営業部長がクビ寸前?
かつて某営業部長が全国の営業マンに対して、「開封確認機能」をつけた業務メールを送ったことがある。しかし、数日経っても何人かの営業マンからは「開封通知」が届かない。それを見た“部下”の営業課長が「なぜ部長のメールを読まないのか?」と、メールを開封していない営業マンに個別で催促メールを送ったというのだ。
すると、社員から「営業部長と営業課長が“管理”し始めました」という情報が、山田氏に寄せられた。メールの開封通知を要求し、しかもそれをチェックするのは、同社で禁止される「管理」にあたる。山田氏は幹部会で早速、この営業部長と営業課長をやり玉にあげた。
「ウチの営業マンには『本社にいる時間があれば、1軒でも多くお客さんを回れ』といつも言っとる。部長と課長のメールは『営業マンをお客さんのところへ行かせないようにする』新手の営業妨害か? 他社より短い就業時間内に、こんなメールを送っとる課長も部長も、即刻クビにせんといかんぞ!」
彼の怒りはなかなか収まらず、営業部長と営業課長はひたすら平謝りだったという。
② 有給休暇をとる社員に、「休む理由を教えてほしい」とメールしてきた係長を厳重注意
あるとき、有給休暇を申請した社員がいた。事前に上司のOKをもらっていたにもかかわらず、休暇前日に「休む理由を教えてほしい」というメールがその上司から届いたという。
一度はOKしたものの、「管理職たるもの、やはり部下が休む理由まで把握しておくべきだ」と考え直したのかどうかはわからない。しかし、その話を聞きつけた山田氏は係長を呼び出し、「部下の私生活まで把握しておきたがるのは『バカ管理職』の典型例だ」と厳重注意したという。
「そんなくだらんメールで社員に不満を持たれたら、どうするんや?」
では、山田氏がそこまで「管理すること」を忌み嫌い、管理職に「部下の不満を減らすこと」を義務づけたのは、いったい、どんな理由からなのだろうか?
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