現地の変革をマネジメントする組織開発力 グローバル人事の「目」
◆国籍の異なる従業員の本音を理解する−−B社
EUに本社がある通信機器企業のB社では、北欧から地中海沿いまで、様々な国の人材が入り混じって仕事をしている。
ラテン系の従業員はミーティングの開始時間になってから家を出るとまではいかないが、必ずしも時間通りに現れないことが多い。逆にフィンランド等の北欧系従業員は開始時間前に必ず資料等を読み込んでおく。
これは必ずしもラテン系従業員が怠けているのではなく、むしろその国・地域のマナーに基づいた相手への気遣いだったりすることがある。北欧系にとっては、ワークライフバランスを考え、仕事の効率を高めることが相手への気遣いになる。
価値観は国や地域の特性だけでなく、本人の個性が影響している場合もある。、先入観にとらわれず、相手の本音と考え方を感じ取ることが、現地の変革をマネジメントすることにつながる。
B社では中堅以上の社員すべてに、相手の本音を引き出してチームとしてまとめ上げるノウハウを身につけさせている。実は外国人も本音と建前の使い分けがあるため、心理学的なアプローチを応用するのである。
このアプローチの起源は古く、フランシスコザビエルのような宣教師が言葉も通じない異国の地で、まず現地住民に受け入れられて、次第に現地住民に対し影響力を発揮したノウハウまで遡る。B社はそのノウハウを現代のビジネス版に昇華したものを活用している。
そのアプローチは極めて具体的で、一部を紹介すると、ホワイトボードか1枚の紙を3等分し、左側に「実際に発言したこと・建前」、中央に「その時に感じたこと」、右側に「感じた理由・本音」をそれぞれ記入させる。建前と本音を書き分けることによって、ギャップが浮き彫りになる。このエクササイズを行うと思わぬ本音が出てきて、互いの「人となり」がわかる効果もあり、心理的な距離が近くなる。このようなエクササイズを2日間かけて行い、現場で活用しやすいノウハウを多数身につけていくのである。
外資系企業は国、宗教、個性により発生するコミュニケーション上のズレを最小限にすることを重視している。日本企業にはグローバル企業の手法を身につけて欲しいと願っている。
人事ジャーナリスト、コンサルタント、HRストラテジー代表、MSC(マネジメントサービスセンター)エクゼクティブアドバイザー
プライスウォーターハウスクーパース、マーサー・ジャパン、アクセンチュアのプリンシパルを経て現職。外資系・日系の大手から中堅企業までの組織・人材マネジメント改革に従事。クライアント数は18年間の累計で300社を超える。著書に 『M&Aを成功させる組織・人事マネジメント』(日本経済新聞社)。寄稿、講演多数。
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