現地の変革をマネジメントする組織開発力 グローバル人事の「目」
◆外資系企業と日系企業の駐在員教育は違う
日系企業と外資系企業の駐在員教育の違いは何か。日系企業は、海外現地法人から駐在員派遣の依頼があってから、候補者を派遣する。駐在員教育は「日常業務遂行」を行うための最低限のレベルにとどまっている。
一方グローバルに展開している外資系企業は、「戦略的な意図」を持った派遣となる。現地の立場から見ると、特命を担った人材が海外から来ることになる。現地の仕事のやり方に、ある意味「よそ者」が手を入れてくるので、多かれ少なかれ軋轢が生じることが多い。よって外資系企業の駐在員には、現地法人のメンバーに受け入れてもらい、メンバーの本音を引き出し1つの方向にまとめていく能力、すなわち「現地の変革をマネジメントする組織開発力」が必要になる。
今回はこの組織開発力の身につけかたについて、事例をもとに解説する。
◆日本企業の駐在員教育は経験談レベル−−A社
日系企業は現地の変革をマネジメントするために、どのような駐在員教育を行っているのだろうか。
具体的な事例でいうと、日系大手ハイテク企業のA社では、直近まで現地法人に勤務していた人にインタビューして、赴任先の風習や対応方法をビデオにまとめている。そして、その国に派遣が決まった駐在員はそのビデオを見て学習している。生の経験談は現地のビジネスに直結するので、駐在員候補も勘所をつかみやすい。その後に書籍等で各国の文化・風習について学習すれば、先輩の駐在員からの教えがしっかりと頭に入る。
またA社は基金を設け、新興国の優秀な人材に対し、留学のための資金援助を行っている。留学の援助を受けた人材は卒業後、A社に入り、本社で学んだ後で母国のA社現地法人に転籍している。
この社員が本社にくる時に「ここが変だよ日本人」というテーマで文化、ビジネス、職場の振る舞い方の違いについて解説するワークショップを定期的に開催している。
大半の日系企業の取り組みは、現地の文化・風土の違いを「知る」レベルでとどまっている。