あなたは大丈夫? 知らないと大変 2008年の新制度(中)
【金融商品取引法】 金や原油、穀物のETFも上場可能に
昨年9月30日に施行された金融商品取引法。その改正法案が早くも3月4日に国会に提出された。審議次第だが、施行は一部を除き、年内と見られる。
この改正の狙いは、日本の金融・資本市場の競争力強化。金融業の規制を緩和し、新たな投資機会を作る一方で、問題を起こした場合の事後責任を厳しくすることが柱だ。
銀行と証券の間では、これまで顧客に関する非公開情報の共有が認められていなかった。しかし、今後は、顧客の同意があれば情報を共有してもよい。両社間での役職員兼職規制も撤廃される。これらにより金融グループは一段と総合的なサービスを行えるようになる。欧米の金融グループとの競争条件上の不利も減る。
また、新たな投資機会としてプロ向け市場の創設が目玉として挙がっている。これは英国のAIM(代替投資市場)をモデルにしたもので、参加者を特定投資家に限定する代わりに、現行の情報開示規制を免除し、インドなど海外のベンチャー企業の株式なども取引できるようにする。特定投資家とは、機関投資家が中心だが、金融資産が3億円以上など一定の条件を満たす富裕な個人投資家も含まれる。
投資商品も多様化される。金や原油、穀物など商品の現物に投資したETF(上場投資信託)や商品の現物と交換できるETFなどだ。さらに、地球温暖化ガスの排出権取引市場を開設できるようにする。
その一方で、課徴金制度も強化される。金額水準の引き上げとともに、虚偽の大量保有報告書(5%を超えて上場会社の株式を保有している場合の株式異動報告)の提出も課徴金の対象となる。
【マネーロンダリング法】 本人確認の頻度急増 宝石買っても必要に
3月1日、通称マネーロンダリング法が施行された。マネーロンダリングとは、犯罪行為で得たおカネを正当な取引で得たおカネのように見せかけることで、資金洗浄とも呼ばれる。法律の正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」だ。
一般人は無関係と思ったら間違い。実は個人への影響も大きい。本人確認を求められる場面が増えるからだ。運転免許証や健康保険証など、本人であることを証明する書類は、これまでも金融機関で口座を作る際に、求められていた。しかし、3月以降は土地やマンションなど不動産の売買をするとき、200万円以上の宝石を現金で買うときなども、本人であることを証明する書類が必要となる。
法整備の背景には、犯罪者による資金隠匿手口の巧妙化がある。たとえば、詐欺によりだまし取ったおカネで他人名義の不動産を購入したり、賭博によって得た資金の没収を免れるため、第三者からの借金を装ったりする事例が出てきていた。