あなたは大丈夫? 知らないと大変 2008年の新制度(中)
世界の流れも影響している。マネーロンダリングは、一国でも規制の緩い国があれば、そこから漏れてしまうため、国際的な協調が不可欠だ。資金洗浄の国際対策組織であるFATF(金融活動作業部会)は、2003年に勧告を出し、非金融業者(不動産業者、宝石商等)も本人確認を行うよう各国に求めていた。
下図にあるように、本人確認を求められる場面は急増した。貴金属店などからは悲鳴に近い声も上がっている。高額取引をする人は、個人情報に敏感な人も多い。法が理解され、浸透するまでは、しばらく販売現場での軋轢が避けられないだろう。
【株式税制】 配当100万円が分岐点 超過分は税率20%に
「とてもわかりづらい税制になった」と投資家から不評なのが、新しい株式税制だ。まだ国会で成立していないため、確定ではないが、少なくとも衆議院を通った政府案の内容は、非常に複雑だ。
ポイントを下図にまとめたが、配当については、年間の受取額が100万円以下なら、現行と同様、税率10%。しかし、配当額が100万円を超えると、100万円以下の部分は税率10%でよいが、100万円を超えた部分は税率20%となる(申告分離課税を選択した場合)。
株式の譲渡益については年間500万円以下なら税率10%だが、年間500万円を超えるとその分が税率20%になる。
しかもこの制度が適用されるのは09年と10年の2年間だけだ。
複数の証券会社で取引している場合は、自分で合算して管理しなければならない。配当の支払調書は、各証券会社から税務署に届くので、名寄せが行われれば、誰が払っていないかすぐわかる。
株式譲渡益についても、複数の証券会社で取引している人は自分で合算しなければならない。従来、特定口座の取引を税務署が把握することはなかったが、09年以降は年間の取引報告書を各証券会社が提出することになった。このため、譲渡益についても正しく支払っているかどうか、税務署にしっかりチェックされることになる。
さらに複雑なのが、配当と譲渡損との損益通算だ。損益通算は税負担を減らせるので、投資家にとってはありがたい。だが、具体的にどう計算するか。詳細は政令で定めることとなっているが、配当額100万円、譲渡益500万円という税率の分岐点があるため、計算方法はかなり複雑になるという。
金持ち優遇批判から、税率の分岐点が設けられたが、そのおかげで、非常に複雑な税制になってしまった。投資家は09年末にかけて、こうした税負担を考慮した株式売買を行わざるをえない。場合によっては、株式売買そのものが縮小してしまう懸念もある。
(週刊東洋経済編集部)
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