その日、研修を終えて、筆者が帰り支度をしていると、仲良しコンビのタロウさんとジロウさんに呼び止められました。社会人3年目のふたりは、まだどこかあどけなさが残っていて、まるで学生のよう。いつも一見不機嫌そうに黙っているタロウさんを連れて、しっかりもののジロウさんがAre you free now? (いま時間ありますか)と話しかけてきたのです。
それで、話って?
何か質問なのかと思ったら、We are going to lunch. Do you want to come with us?(ランチに行くんですけど、一緒に行きませんか)とのこと。研修生とランチに行くことなんてめったにないので「それはそれで楽しいかな」と思ったのですが、「そんなに腹減ってないし……」と躊躇していると、タロウさんが I want to talk to you.(先生に相談があるんです)と言うではありませんか。筆者に話したいと言うからには、英語のことで悩んでいるのでしょう。せっかくなので一緒に行って相談に乗ることにしました。
ふたりに連れられて筆者が向かったのが、彼らの社員食堂。「外部の人が入っても大丈夫?」と尋ねると、ジロウさんは首を傾げながらMaybe.(たぶん)と心もとない返事。「でも、チェックしないのでバレないっすよ。Don’t worry. (安心してください)」だそうです。一方のタロウさんはというと、筆者とジロウさんにはお構いなしで、もう並んで注文しているし……。若者は細かいことは気にしないみたいです。
意味もなくスパイ気分でドキドキの筆者。いけないことをしているような、一抹の不安を抱えながらも、よその社員食堂なんてなかなか来られるところではないし、正直かなり興味津々。Curiosity killed the cat. (好奇心は猫を殺した)ということわざもありますが、とりあえず殺されずに無事にテーブルに辿り着きました。
ジロウさんおすすめの「カツ丼&カレーセット」は辞退して、「焼き魚セット」にした40代。やっぱり歳には勝てないなぁと、タロウさんとジロウさんの前にある「カツ丼&カレーセット」を横目にBon appétit! (食事を楽しんで!)とランチを食べ始めました。
So, what do you want to talk about? (それで、話って?)と筆者が切り出すと、タロウさんがカツ丼を頬張りながらYes, yes!とうなずきます。そのあと、大急ぎで口の中のものを片付けて言いました。
× Please teach me your opinion!
「あなたの意見を教えてください」ということでしょう。タロウさん、日本語をそのまま直訳したようなのですが、この「教える」という動詞、ざっくりと英語では3種類に分けられます。
ひとつ目はタロウさんが使ったteachという意味の「教える」。これは学問や楽器、スポーツなどの専門的な知識や技術を、講義やレッスンで「教える」というときに使います。
例をいくつか見てみましょう。
つまり、「あなたの意見」にはteachでは意味が合わないのです。
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