社会人の時間は貴重だから、資料を作成してから「こんなものを求めていない」といわれたら意味がないし、時間がもったいない。できるだけ、発注者(上司)と作成者(あなた)の乖離をなくす作業を事前に忘れてはいけない。
当然ではあるものの、会社は大学ではない。資料を作る前に、次を意識して情報収集源にあたらねばならない。「ネットで収集しただけのつぎはぎ資料になっていないか」「書籍、雑誌、テレビといった情報の、単なるまとめになっていないか」「あまりに原則論の、誰でもわかっている情報ばかりになっていないか」といったことだ。なぜならば、会社は利益を追求する。すくなくとも、お客の満足向上を目的とする。
大学のレポートと仕事で求められるレポートも、調べて書く、という点だけを見れば変わらない。ただ、大学のレポートは、自分で意思を持って調べ、そして自分で検証する。大学の先生が採点するのは、その手法であり、論理展開であり、研究としての新規性だ。
しかしビジネスパーソンの資料は、大学ではなく会社のなかで使われる。ということは、多かれ少なかれ、会社という組織の意思決定に関わるものであるはずだ。これは資料を作成する側からするときびしくはある。ただ、大事なのは、あなたの資料から新たな発見を導くことであり、これまで誰も気づかなかった事実を提供することだ。そして、その資料をみたひとが、なんらかの具体的なアクションに移行できれば素晴らしい。
みなさんが上司だとしよう。たまに100点を取るけれど成績が安定せず、遅れがちな部下。そして、安定的に70点を取り、納期を守る部下。ほとんどの場合は、後者を評価するし、重宝するはずだ。上司の満足基準は、まず納期遵守にあると心しておこう。
そして、資料については、情報の「時間範囲」が重要だ。自動車メーカーの販売台数比較をするとしよう。最新の業界勢力図であれば、昨年のデータはほしい。そして、販売台数を比較するとすれば、何をしようとしているのだろうか。
あなたの会社が、どこかのメーカーを新規販売先として検討しているのであれば、そのシェア推移が10年くらいどう変化しているのか。そして、どのような技術を取り入れているのか。さらに、関係者へのインタビューをとって、どのような車種を開発したり、技術的に進化させたりするのか、直近のヒアリング情報があったほうがよい。
ただし、たとえば2001年に中国がWTOに加盟した影響を見ようと思えばどうだろうか。最新のデータよりも、2001年前後のデータが重要になる。それに加えて、自動車各社の戦略がどうなっていったのか。そして実際に、輸出入は伸びたり減ったりしているのか。さらに関係者にインタビューできれば尚可だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら