その1つが、3月30日のテレビ番組での、妊娠中絶をした女性に対する「何らかの処罰がなくてはならない」との蔑視発言だ。たちまち炎上し、さすがにトランプも発言を撤回してダメージコントロールに努めたが、一度発言してしまったことは簡単に消せない。同候補はこの暴言で多数の票を失ったはずだ。
第2に、過去から繰り返していたイスラム全体を敵に回す発言であり、トランプは、イスラムの過激派やテロリストに限らずすべてのイスラム教徒を問題視して「入国を一切禁止すべきだ」などと主張した。
また、テロ容疑者の尋問に関しては、「水責め以上のことをやるつもりだ」と拷問を容認する発言をし、さらにIS(イスラム国)に対しては戦術核兵器を使う可能性を否定しなかった。いずれも冷静な米国人には聞くに堪えないことだろう。
外交に対する危険なほどの無知ぶり
第3に、3月26日付ニューヨーク・タイムズ紙インタビューなどでさらけだした外交に対する無知だ。日本に直接関係のあることだけでも、日本の核武装を認めること、日米安保条約を実質的に平等な条約に改定することなどを口にし、また、日本が米軍の駐留経費を大幅に増やさなければ米軍の引き揚げもいとわないと述べた。
もし、米軍がトランプの主張するようにすれば世界の秩序は大混乱に陥り、その中で米国は猛烈な批判を浴びることは必至だ。同氏の好きな決まり文句である「偉大な米国を取り戻す」ことなど夢のまた夢となるだろう。
さらに、過去のことになっていたはずの、第二次大戦中の悪名高い日系人強制収容についても是認するかのような発言をしている。これも失点といえるだろう。
そして、トランプの過激発言は支持者と抗議する人たちの間で流血の事態を引き起こした。さすがにこのような事態は、共和党にとって深刻な問題だ。同氏の勢いを止め、選挙戦から降ろさないといけないという認識が重鎮の間で強くなった。
共和党の候補を決める全国大会は7月の18~21日に開催される。状況はまだ流動的だが、あえて今後の予備選を展望してみると、トランプが残りの予備選でも勝利を重ねていくことは難しいだろう。
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