気仙沼市を揺るがす巨大海岸堤防計画、被災地住民を翻弄
「何でこんなに高い堤防が必要なのかと住民から疑問の声が出ている。高さ10メートルといっても、海岸が広い所ならばある程度容認できるものの、同じ基準でやると景観も入り江も台なしになる」(畠山議員)
だが、議論は一向にかみ合わなかった。村井知事は「2月議会での畠山議員の質問のときから戸惑っている。(堤防建設を)もっとやれ、もっと造れというのでなく、やらないでくれというのは初めて聞いた」と皮肉を交えて切り返した。
そのうえで、「今の畠山議員の質問はそこに住む人(の利益が)中心だが、たまたま通過した人も守らないといけない。この計画をやめてしまうと、これからどんな理由があっても建設ができなくなる」と村井知事は反論した。
とはいえ、知事の姿勢は硬直的と言わざるをえない。
「たまたま通りかかった人のために10メートルの堤防を造るなんてばかな話はない。そもそも造る必然性がない。人が住む所と住まない所を同じ高さにすることにも整合性がない」と畠山議員は批判した。
結局、議会での論戦は平行線のままで、解決の糸口を見いだすことができずに現在に至っている。
気仙沼で生まれ育ち、漁業を家業としてきた畠山議員は、海の大切さを知り尽くしているという自負がある。リアス式海岸の漁港を、堤防だけで津波から守ろうとすると、とてつもなく巨大な構造物が必要になる。巨大な堤防は水辺の環境や景観の破壊も招く。「海とともに生きる暮らしを根底から破壊しかねない」と畠山議員は危惧する。