持ちビルを現物出資 熊谷GMO社長の苦境
GMOインターネットが債務超過回避のため打ち出した増資。が、出資の大半は社長の保有不動産だ。
(『週刊東洋経済』12月29日-1月5日合併号より)
有力ITベンチャーのGMOインターネットが土俵際に追い込まれた。楽天やライブドアの後を追うように、消費者金融事業に500億円以上もの資金を投じたことが裏目に出た格好だ。債務超過を回避するため、12月27日には総額59億円の第三者割当増資を実施する。
増資の目玉はヤフーとの提携だが、実は大半を出すのは熊谷正寿会長兼社長自身。しかも深刻さを印象づけるのは現物出資という点だ。光通信など、過去にも財務立て直しのため経営者が増資を引き受ける例はあったが、当然ながら現金出資。8月に証券子会社を48億円で引き取ったことなどで、熊谷氏の手元資金が枯渇したとも受け取れる。
熊谷氏が拠出するのは東京・六本木の商業ビル2棟と西麻布の高級マンションで、評価額は45億円。不動産登記簿によると、六本木物件の所有者は「ヴィヴィッドインターナショナル」という会社。熊谷氏が全株を保有し、妻の雅恵氏が代表取締役を務めるプライベートカンパニーだ。
義父の会社に管理委託
熊谷氏は國學院高校を中退後、神楽坂でパチンコ店などを経営する家業の「熊谷興業」の勤務を経て1990年に独立したが、その直後に設立したのがヴィヴィッド社。GMOの前身会社を設立したのはその半年後だ。ヴィヴィッド社はテレマーケティングや自己啓発用CDの制作などを行い、95年には化粧品会社も買収した。が、近年は資産管理会社の色彩が濃くなった。
六本木交差点近くの6階建てビルを取得したのは2001年8月。翌年4月には隣の4階建てビルも買収した。近所の商店主によると「テナントがよく替わる」らしく、現在はマッサージ店や牛丼店などが入居。年間約1億円の賃貸収入があるようだ。
ビルの管理業務を委託する先は「イー・エステート」という不動産会社で、経営するのは熊谷氏の義父(委託契約は解消予定)。同社はGMO本社の一角を間借りするほか、義父はGMOの顧問を一時期務めるなど関係深い。
現物出資された不動産についてGMOは「適宜売却による現金化も検討」としており、当面は保有の方向。法律的には問題がないともするが、定款には不動産賃貸業を謳っておらず、いかに特異な出資かが、そこからもうかがえる。
(書き手:高橋篤史)
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