社外取締役は「官僚」の天下り天国になるのか 在野の人材不足問題をどう解決する?

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退職ないしは退職の近い官僚が、出身官庁が所管する外郭団体等に就職斡旋される慣習としての天下りを批判され、原則禁止になったのは民主党政権のときのこと。それが、自民党になって新たな天下り先の温床に社外取締役がなってくるのでは、ということなのでしょう。企業経営者などを取材していくと

「社外取締役には大学教授や弁護士、元官僚が就任するケースが多い。もし社外取締役の設置が義務付けられれば、元官僚を招聘する企業は増えるのは明らか」

と、ある上場企業の経営者に取材すると認めていました。朝日新聞の調査によると社外取締役の2割が官僚出身とのこと。さらに社外取締役がいない企業が任用を進めるなかで、官僚出身者はさらに増えていくだろうと指摘しています。

在野に人材が足りない!

背景には、社外取締役としての人材が在野に足りないという問題があります。民間企業の経営者が社外取締役になることは徐々に減少していくことでしょう。というのは、「競業取引」や「利益相反取引」についても、会社法では制限を設けています。主務として経営に携わる企業から取締役会の承認を得る必要があります。

さらに社外取締役として役割も重くなりつつあります。以前であれば取締役会に出席して軽く意見だけ述べるなど、経営責任を背負うという認識は必ずしも高くなかったかもしれません。ただ、最近は企業と一蓮托生で関わるくらいのコミットを求められるケースが増えています。事業の理解に加えて、業界動向を十分に理解して、さらに自身が備えている専門領域の観点から鋭く指摘することが求められるようになりつつあります(まだ、そこまで進化しておらず、形式だけの社外取締役を求めている企業も少なからずあるようですが)。

ちなみに社外取締役の活用により、企業統治が「変化した」とする上場企業の回答が7割超もあるそうです(大和総研調べ)。

社外取締役の選任や活用で、企業統治が「変化した」と答えた上場企業は有効回答の72%を占め、「変化していない」(7%)や「どちらともいえない」(20%)を引き離しています。社外取締役が外部の視点で経営に好影響をもたらすことへの期待が大きいようです。

「変化した」と答えた上場企業が挙げた理由では「経営方針や経営改善について有効な助言がなされるようになった」との回答が最も多くなっていました。以下、「社外取締役と共有する情報を充実した結果、取締役会の議論が活性化した」、「取締役会で株主の視点をより意識した議論がなされるようになった」などが続きます。

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