東芝、辞任した副社長が今も常勤する不可解 スクープ!密かに行った人事の実態
一連の不適切会計問題を受け、歴代社長3人と取締役6人が辞任した東芝(7月21日付)。これは明らかな「引責辞任」であり、残務処理を終えて速やかに会社を去った、と考えるのが常識だろう。たとえ余人をもって代えがたい有能な人物であったとしても、引責辞任とはそういうものだ。ところが、東芝ではそんな常識からはかけ離れた人事が行われている。
取締役代表執行役副社長を辞任した小林清志氏は8月1日付で「半導体顧問」に就任し、今でも副社長の時と同じく、本社ビル31階のメモリ事業部の一角にあるオフィスで執務を続けているのだ。
ただ、この人事は世間的な批判を受けるばかりか、会社全体にも悪影響を与えると考えたようで、顧問に就任したことは社内の中でもごく一部にしか知らされていない。
会社側も半導体顧問への就任を認める
小林氏の顧問就任について、東芝広報室は次のように説明する。「小林氏の営業資産と技術資産は当社の半導体ビジネスにとって必要。他社からの引き抜き等の可能性も考慮し、会社として判断したもの」。
副社長当時は電子デバイス事業グループの担当役員だったが、今は業務範囲は狭くなっており、半導体事業の提携、事業再編などの将来戦略に関わる立場になっている。
東芝の前2015年3月期の業績は売上高6兆6600億円、営業利益1700億円になる見込み。そのうちNAND型フラッシュメモリなど半導体事業を抱える電子デバイス部門が2140億円を稼いでいる。この部門を率いてきたのが小林氏であり、少なくとも現在、東芝の屋台骨なのは間違いない。
小林氏が高い評価を受けているのは事実だ。7月21日付で辞任したことに対し、あるアナリストは「半導体は小林さんがいなくなったら、ダメになるかもしれない」と懸念していた。それだけ市場関係者からも評価が高い。またある東芝元役員は「あのコストに厳しい佐々木則夫社長(当時、7月に副会長辞任)を説得し、四日市工場(三重県)への継続的な設備投資を続けた人物」と評している。室町正志現社長が、同じメモリ部門出身で長期にわたってその功績を知っている。半導体顧問への就任は、その室町社長の強い要請もあったようだ。