東芝、辞任した副社長が今も常勤する不可解 スクープ!密かに行った人事の実態
小林氏は、東北大学理学部修士課程を修了し、1980年5月に東芝に入社。社歴は、NAND型フラッシュメモリ筋だ。2002年には社内カンパニーである、セミコンダクター社のメモリ事業部フラッシュメモリ事業戦略部長に就任。その後2010年にはセミコンダクター社の社長に就いた。
人物評は、べらんめえ口調で、ずばずばモノを言うキャラクター。時には、業績の上がらない部署を「つぶす」などと豪語し、部下に危機感を持たせることもあったという。2014年末の役員懇親会では「イノベーティブな技術が東芝から生まれていないのでは」との記者の質問に対し、「めちゃくちゃ社内でやっている。NANDだけじゃない」と反論していた。
小林氏の功績は、攻めの技術開発によって他社よりも数年先を走ることで、NANDのシェアを伸ばし続け、追随を許さなかった点だ。熾烈なスピード競争で先頭を走り続けた結果、韓国サムスン電子と東芝という二強体制を守り抜いたことが、今日の稼ぎ頭につながった。社内では”クレイジーキヨシ”と呼ばれることもあり、先の技術を考えて事業に移す手腕は周囲も認めるところである。
実際、佐々木社長の時代には、次の社長候補として、電力出身の北村秀夫元副社長と後継を争ったこともあった。しかし結果的に、社長レースには2人とも破れ、田中久雄前社長(7月に社長辞任)が引き上げられることになる。
利害関係者に説明する責務
半導体顧問に就いた小林氏は、「任期が当面1年間」(広報)で、報酬については明らかにしていない。大がかりな設備投資や技術開発を進行している場合、容易に途中で引き継ぐことも難しく、一定のメドが立つまでということも考えられる。ちなみに、現在の半導体事業のトップである成毛康雄執行役専務は、まじめで誠実な実務家であり、小林氏とは対照的な性格のようだ。
では、いったい何が問題なのか。実は、辞任した取締役のうち、常勤している人物はもう一人いる。前田恵造氏も、7月21日付で取締役と代表執行役を辞めているが、執行役専務として引き続き執務中だ。ただし、これは会社側が公表している事実。小林氏のケースでは、開示せずに済ませようとしている点が問題なのである。
不適切会計については、第三者委員会の報告書では、副社長4人の中で唯一、小林氏の名前はない。しかし、半導体部門も不正会計の舞台のひとつであり、当然、監督責任がある。だからこそ引責辞任したわけだ。にも関わらず、ひそかな人事によってこれまでどおり仕事を続けるのは、世間常識からはいかにもかい離している。厳しい言い方だが、こうした点を改めない限り、東芝再生の道は遠いと言わざるを得ない。
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