藤野:東芝の件は正直、驚きました。不適切会計の第一報があった時、まず思ったのは、東芝はコーポレートガバナンスが機能しているから、こういう事実があぶり出されてきたんだなということでした。ところが3代にもわたって不適切会計を続けていたという事実が報じられた時は、ショックでした。
それと同時に、フォルクスワーゲンでも、排ガス規制で不正を続けていたという事実が発覚しました。東芝は日本、フォルクスワーゲンは欧州を代表する大企業です。そこで長年にわたって不正が行われ続けていたという事実を前にして、本当にコーポレートガバナンスと称される制度によって、企業の不祥事を防げるのかということへの疑問も覚えました。
雇用の流動化とガバナンスの密な関係
渋澤:日本の雇用体系って終身雇用と年功序列ですよね。ずっと同じ組織の中にいて、会社で働く時間が長い。そういう環境の中にいると、いちばん効くガバナンスは自分の上司だったり、周りにいる同僚だったりするわけです。ところが、その周りの人たちが不正に目をつぶってしまうと、社内的に「まあ、いいか」というムードが出来上がってしまう。つまり、新陳代謝が機能していない組織は、不祥事が起こりやすい。フォルクスワーゲンは終身雇用じゃないかもしれませんが、きっとコアとなる人物が同じで、組織の新陳代謝が働きにくい環境だったのではないかと推察します。
中野:それはベースにあるかも知れませんね。
藤野:逆に、正規雇用ではなく非正規雇用の人たちは流動化しているので、そういう人たちの口から不祥事が暴露されるケースもありますよね。雇用の流動化とコーポレートガバナンスは、結構密接に関係しているように思えます。
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