渋澤:傾斜マンション問題についても、恐らく現場で杭を打っていた人たちは、それがどのような影響を及ぼすか、想像できなかったのだと思います。おそらく、「従業員だから」という意識にとどまっていたのではないでしょうか。もう少し高い職人意識の目線を持ち、「杭の本数、それじゃおかしいんじゃない」と主張すれば、この問題は未然に回避できたはずです。それは、多少なりとも従業員が自分の仕事にプライドを持ち、会社全体の経営につながるという目線を持つということです。
中野:「皆やっていることだから」という考え方は、ある種の免罪符になりますからね。
責任の所在があいまいになりがち
渋澤:日本企業の場合、不正は自分が利益を得るために行うのではなく、会社のために行うという考え方が強いじゃないですか。だから責任の所在もあいまいになる。
中野:米国で大手エネルギー会社のエンロンが、不正会計で破綻した事件がありました。あの事件の顛末は、不当に高額な報酬を得ていた経営陣に、多額の罰金と長期間に及ぶ懲役刑を科すことで決着したわけですが、日本の場合、個人に対して重い罰を与えることは、ほとんどありません。
渋澤:「会社のため」という意識下で行われる不正が多いからでしょう。
中野:日本株のアクティブファンドを運用しているお二人に聞きたいのですが、不祥事を起こした企業への投資って、どう考えていますか。
藤野:先ほど少し言いかけたのですが、社長に1対1で会って話を聞いたとしても、不正を見抜けない場合はありますが、それでも、やらないよりはやった方がいい。だから、1対1で経営者に会えないような企業には最初から投資しない、という手もあります。
これは不祥事によって株価が急落し、ポートフォリオが棄損するのを防ぐために講じる、リスクヘッジ手段のひとつです。で、不幸にして不祥事が起こってしまった企業については、原則としてかかわらないようにします。ファンドに組み入れていたら、それは手放す。これから投資するにしても、不祥事を起こした企業は避けます。
ただし、起こしてしまった不祥事を反省したうえで、組織をきちっと立て直している企業については、ひょっとしたら投資する価値があるかも知れない。事実、オリンパスは組織を立て直し、企業体質は以前に比べて格段に良くなりました。結果、株価も不祥事前の水準に戻っています。
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