渋澤:不祥事は起こってはならないものです。ただ、不覚にも失敗は起こるものであり、失敗を恐れていれば事が進みません。だから、大事なのは起こってしまった後の対応ですね。長期投資家としてはここを見るようにしています。不祥事の原因がどこにあるのか、責任の所在は誰にあるのかを明確にしたうえで、適切に処理する。
そのプロセスが、誰の目にも分かるように、かつ素早く進めた企業であれば、投資することもやぶさかではありません。なぜなら、市場が過剰に反応していて、企業の本質的な価値と比べて株価がかなり安く推移している場合があるからです。また、保有していたとしても、即時にすべてを売却することもしません。
真摯な対応をしない企業は「売り」
不祥事を起こした会社でも、真面目に働いて家族を養うことに日々懸命に務めている社員の数の方が圧倒的に多い。私たちはそのような社員が勤めているからこそ持続的な価値創造が可能になる企業に投資をしています。企業の株価ではなく、その持続的な価値創造が毀損されているのか、逆に事件が起こったことによって長期的には価値創造の向上へつながる可能性があるのかを見極める、目的ある対話に務めることがわれわれ長期投資家の責務であると考えています。
そういう意味では、対話力がない企業の場合、つまり自分が引き起こした不祥事に関して投資家から問われた時に真摯な対応をしないような企業のことを示しますが、これは、売りです。
中野:私はもう少し厳格というか、不祥事についてはシビアにとらえていて、基本的に保有していたらいったん、全部売却します。なぜなら、不祥事が起こった時点で、企業価値がどうなるのか分からないからです。それをじっと保有し続けるよりも、合理的に企業価値が算定できるようになってから、改めて買い直した方がよいでしょう。
藤野:コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードを制定する土壌が生まれてきた時だけに、このところの企業不祥事の連続は残念な気もしますが、いずれにしても各企業の今後の対応が注目されますね。その行方はじっくり見ていきたいと思います。
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