渋澤:社長だってわかっていないかもしれない。大きな企業だとね。
中野:社外取締役もそこまで見抜くことはできないでしょうし。
渋澤:社外取締役って、基本的には監査法人の目を通った数字しか見ないですし、執行役員ではないから、上がってきた数字が本当の数字かどうかまでは確認するのは、平時の場合は執行側に頼らなければなりません。会計の不正をチェックするのはほぼ不可能と思ってよいでしょう。
ただ社外取締役は、今回のような不祥事をはじめとして会社の経営を揺るがすような有事が起こった時、経営陣に厳しいことが言えるという点で存在意義があります。東芝に関しても、今回のように長年不正会計が行われていた事実が発覚した時は相当驚いたと思いますが、これから組織を浄化していくうえで、存分にその役割を果たしてもらいたいですね。
中野:東芝のケースを情緒的に見ると、社長がいちばん悪いということで処分されましたが、それ以外の人たちは被害者という見方がされています。でも、実はそこにも闇があります。東芝という会社のカルチャー、つまり社長が「チャレンジ」と称して、無理難題を上意下達でやらせてしまうというカルチャーですが、まともな組織なら、そういう命令が上から降りてきたとしても、組織のどこかの段階で面従腹背が起こります。
トップの無理難題にノーと言えるか
たとえばトップが「もっとやれ」「こんなの数字って言わねえぞ」と言ったとしても、部下が「できないものはできないよ」と現実的に対応する会社は、まだ組織の浄化機能があると思っていいのではないでしょうか。
渋澤:トップの無理難題に対してノーと言える組織であることは、やはり大事ですね。
中野:自然と組織にビルトインされる企業文化が、東芝の場合、この手の不正を組織ぐるみで隠蔽しようとするものになってしまったのが、最大の問題点だと思います。
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