VWは、この多難をどう乗り切るつもりなのか 新経営陣の人物像とその手腕とは
排ガス規制を逃れるためにディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していた問題を受け、フォルクスワーゲン(VW)が経営陣の刷新を決めた。
前代未聞の不祥事でブランドイメージは失墜。全世界レベルでの販売とともに巨額の制裁金や対策費用などの支払いに伴う財務への悪影響が懸念される中、フォルクスワーゲンはどんな手を打ち、この多難を乗り切るつもりなのか。9月25日に開いた監査役会で決まった新経営体制とその主要な顔ぶれ、人物像を詳しく見てみよう。
まず、今回の不祥事の責任を取って辞任したマルティン・ヴィンターコルン前社長の後任に就いたのは、ポルシェの現CEOであるマティアス・ミュラー氏だ。2020年までフォルクスワーゲンを率いるという契約も結んだ。
グループ新CEOは、見習工からの叩き上げ
ミュラー氏はドイツの自動車メーカーのトップとしては珍しく、"Dr."ではなく、"Mr."である。「トレイニー」と呼ばれる見習工からの叩き上げだ。現在のドイツ車メーカーの役員の中でトレイニーからの叩き上げは、BMWの技術担当取締役であるクラウス・フルーリッヒ氏くらいだろう。
1953年旧東ドイツのザクセン州ケムニッツ生まれ、インゴルシュタットで高校を卒業した後、アウディAGにて工具制作見習いとして働いた。さらに、ミュンヘン応用科学大学(Munich University of Applied Sciences)でコンピューター・サイエンスの学位を修得した後、1978年にIT技術者として、再び、アウディAGに入社する。
その後、アウディのブランド戦略やプロダクト戦略を立てるプロジェクト・マネージメントとして辣腕をふるう。2007年には、フォルクスワーゲン・グループおよびブランドのプロダクト・マネージメントの責任者に就任する。
筆者はフォルクスワーゲン・グループがポルシェを傘下に修めた後、ミュラー氏が2010年にポルシェAGのCEOとなった際にインタビューしたことがある。当時のコメントが以下だ。
「私がプロダクト・マネージメントを担当した当時のアウディは、年産35万台規模の小さな会社であり、大きさの違うセダンしか作っていませんでした。アウディが成長するための戦略を考えて、プロダクト・ポートフォリオを組み立てることは、その後の成長にとって非常に重要でした。フォルクスワーゲンに移ってからは、トヨタをターゲットにプロダクト・ポートフォリオを構築しました」
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