VWは、この多難をどう乗り切るつもりなのか

新経営陣の人物像とその手腕とは

グループとしての機能は、効率および将来を目指した分野に集中する。例えば、グループとしての製品戦略、新規事業、提携および持ち株会社、コネクテッドカーのための活動、CO2削減のための活動など、だ。技術担当取締役によって分析がなされて、必要なら取締役の命令でグループ横断的に共同開発を実施する。

そして、フォルクスワーゲン・ブランドは4つの地域にわけて、CEOであるディース氏に直接、報告を行う仕組みとなる。グループとしてのマネージメントからプロダクション部門が廃止されて、各ブランドや各地域の独立性を高めると同時に、大きな権限と責任が移される。つまり、地域の責任は地域で採ることにして、その報告はブランドのディース氏に直々に伝わる仕組みとなる。

長らくヴィンターコルン氏の後継との噂が囁かれており、人望と手腕が伴うと目されるミュラー氏がグループの新CEOとなり、アメリカを代表する自動車メーカーであるGMのエグゼクティブ養成プログラムを受けたヴァーランド氏がグループの北米担当取締役に就任。そして、VWブランドの新CEOには、BMWから転職してきたばかりで今回のスキャンダルと縁遠いディース氏が就く。世界を4つの地域に分けて権限と責任を委譲し、グループに権限が集中するのを防ぐ方針を敷いた。

状況は予断を許さない

レピュテーション・リスクへの対応としては、スムーズに進め始めたかのように見えるが、フォルクスワーゲンを取り巻く状況は予断を許さない。

不正を突き止めたアメリカ環境保全局(EPA)から180億ドル(約2兆1000億円)の制裁金が課せられる可能性がある上、世界で1100万台もの対象車両に技術的な措置を施すために巨額費用が必要になり、現時点では65億ユーロ(約8700億円)の引き当てを決めている。

問題はそれだけにとどまらない。スイスが約18万台に及ぶ対象車両の販売禁止を表明。各国政府の対応次第でブランドイメージの失墜に伴う客離れ以上の販売への悪影響なども懸念される。

9月25日の公式発表文でミュラー氏本人は、こうコメントしている。

「信頼を取り戻すことが最優先の課題です。最大限の透明性を確保しながら徹底的に調べ上げ、現状を見極めながら、正しい結論を導き出します。自動車業界の中で最も厳格なコンプライアンス及びコーポレートガバナンスの基準を策定し、実施する予定です。これに成功すれば、フォルクスワーゲン・グループは、革新力、ブランド力、そして能力と熱意あるチームにより、以前より強い企業として生まれ変わるチャンスがあります」

災を転じて福となせないまでも、自らの手で構築してきたフォルクスワーゲンのブランド力を、再び、取り戻すことができるか。手腕が試される。

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